おやぢの部屋2
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WHITACRE/Choral Music
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Klaus-Jürgen Etzold/
Junges Vokalensemble Hannover
RONDEAU/ROP6064




人気作曲家エリック・ウィテカーの合唱作品は、もはや日本の合唱団でも定番のレパートリーになっているようですね。コンクールやコンサートで彼の曲を取り上げる団体は、年を追うごとに増えていっているような気がします。CDも、自演盤も含めて何枚か出ています。ただ、今までは英語圏の合唱団によるものしか聴いたことがありませんでしたが、ついにドイツの合唱団がフル・アルバムを作ってくれました。これで、文字通りウィテカーも「国際的」。
ここで歌っているのは、ハノーファーにある「ユンゲス・ヴォーカルアンサンブル」という団体です。みんな黄帝液を飲んでいるわけではなく(それは「ユンケル」)「若い声楽アンサンブル」という意味のネーミングです。でも、ブックレットに載っている写真を見てみるととても「若い」とは言えないようなおじさん、おばさんが並んでいますね。なんでも、この合唱団が創られたのが1981年のことだそうですから、もしかしたら当時のメンバーがそのまま残っているのかもしれませんね。始めたときは「若」かったものの、30年以上経ってしまえばおじさんになるのはあたりまえ、まさか、こんなに長く続くとは思わずに安易につけた名前だったのでしょうか。
この録音は、おそらくウィテカーの立会いの下に行われたのでしょう。同じブックレットには、ウィテカーがリハーサルでメンバーに囲まれている写真や、コンサートでカーテンコールを受けている写真もありますから、録音に先立ってまずコンサートが行われていたのかもしれませんね。かなり時間をかけて、曲を練り上げて録音に臨もうというスタンスだったのでしょう。
確かにここでは、そんな、しっかりウィテカーにリスペクトをささげている様子が目に浮かぶような、共感に満ちた演奏を味わうことが出来ます。まず、合唱団のメンバーが60人ほど、というサイズが、とても深みのあるサウンドを作っています。例えば自演盤などでは、せいぜい30人程度で歌われていて、それはそれで緊張感のあるタイトな響きを聴くことが出来るのですが、それがもう少し増えたことによって、そこからはもっと暖かみのあるものが感じられるようになっています。例えば、両方に含まれている「Sleep」という2000年に作られた曲を比べてみると、ウィテカー特有の不協和音が、自演盤ではストレートに「雑音」っぽく聴こえるのに、このCDではもっと意味のある和音のように聴こえてきます。
逆に、この中では最も初期の作品である1993年の「Cloudburst」では、始まりのあたりのちょっと「前衛的」な部分が、そのまま「難解なもの」として聴こえてくるあたりは、かつてそういうものを実体験として持っていたドイツ人の感性の表れなのかもしれません。おそらく、そんな、作曲家自身でも気が付かなかったようなアプローチまで、ともに楽しみながら録音が進められていったのではないか、という思いになるほど、これは楽しめるアルバムでした。
なによりも、個々のメンバーのレベルがかなり高いうえに(プロではないそうです)、それこそ歴史の重みさえ感じられるような、合唱団としての熟達度があります。言ってみれば、長年樽で寝かせたお酒、みたいなものでしょうか。優しく溶けあったハーモニーが、とても素敵な味を醸し出しています。
1996年にソプラノ・ソロのために作られたものを、2001年に混声合唱に改訂した「Five Hebrew Love Songs」では、自演盤では伴奏も改訂された形の弦楽四重奏に変わっていましたが、ここではオリジナルのヴァイオリンとピアノのバージョンのままなのも、嬉しいところです。こちらの方が、より素朴な味があります。ただ、ライナーノーツに「改訂の際に、伴奏はそのままにした」とあるのは、自演盤にあるウィテカー自身のコメントとは食い違っています。おそらくこちらは事実誤認でしょう。

CD Artwork © Rondeau Production GmbH
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by jurassic_oyaji | 2013-06-26 19:49 | 合唱 | Comments(0)