Anja Harteros(Sop)
Bernarda Fink(Alt)
Mariss Jansons/
Chor und
Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
ARTHAUS/108 081(BD)
ヤンソンスの「復活」の映像と言えば、数年前に
こちらでもご紹介していました。確か、
2009年
12月のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とのライブでした。今回は、ヤンソンスが首席指揮者を務めているもう一つのオーケストラ、バイエルン放送交響楽団との
2011年5月のライブ映像です。たった1年半の間にこんな大曲を2つの世界的なオーケストラによって演奏するなんて、かなりすごいことではないでしょうか。
今回の映像には、ひそかな楽しみがありました。それは、ここには「復活」だけではなく、当日演奏されたもう一つの曲が収録されていることです。その曲は、マーラーの「リュッケルトの詩による歌曲集」の中の「
Ich bin der Welt abhanden gekommen(私はこの世に忘れられ)」というオーケストラ伴奏のソプラノ・ソロのための作品を、クリトゥス・ゴットヴァルトが
16声部の無伴奏混声合唱に編曲したもの、今まで何種類もの
CDを聴いてきましたが、映像で見るのはこれが初めてですからね。
それは、ステージにオーケストラと合唱団が全員そろった後、ヤンソンスではない指揮者が木管の前あたりに立って始まりました。その指揮者は合唱団の芸術監督のペーター・ダイクストラではなく、その前任者のミヒャエル・グレーザー、ちょっとがっかりです。
100人ぐらいの合唱団員が5列に並んでいるのですが、なぜか最前列だけ座っていて、2列目より後ろの
80人ぐらいによって歌われます。さすがに、この曲を
100人では多すぎるとの判断だったのでしょうか。しかし、それでもまだ多かったのか、なんとも集中力に欠けるアバウトな演奏だったのには、さらにがっかりさせられました。こんなんで、終楽章の合唱は大丈夫なのでしょうか。
そのまま休憩なしで、ヤンソンスの指揮による「復活」が始まります。これはもう、コンセルトヘボウと同じ
コンセプトが貫かれた、とてもすっきりした演奏です。決して重くならない、それでいて中身のぎっしり詰まった感じですね。もちろん、会場は広いステージを持つガスタイクですから、
18型の編成のオーケストラでもスペースは十分、合唱団は座ったままひたすら待っています。ですから、第3楽章以降は休みなく続けて演奏され、どこぞでの演奏会のように3楽章が終わったところでドヤドヤと合唱が入ってくるというみっともないことは起こりません(これが本来の姿なんですがね)。そこで、だれにも邪魔をされずに歌い始めたフィンクの声は、コンセルトヘボウの時とはとても同じ人とは思えないほどの深い響きを持っていました。おそらく、これは録音ポリシーの違いによるところが大きいのではないでしょうか。しかも、ここでは、映像ディレクターのブライアン・ラージが、お得意のクローズアップのショットで、彼女の姿を延々と撮っていますから、なおさらです。と、そのバックに映りこんでいるトランペットのトップの人が、彼女に合わせて歌っているのが見えました。口がぴったり歌詞と合っています。ラージは、ここまで計算していたのでしょうか。
終楽章の楽しみは、なんといってもフルートとピッコロの掛け合いでしょう。首席奏者のフィリップ・ブクリーが、ゆるぎないテクニックと響き渡る音で見事にアルペジオを決めると、それまで何度もパッションあふれる演奏姿がアップで写っていたピッコロのナタリー・シュヴァーベが、ひときわ熱いしぐさでとても美しくソロを吹ききりました。
そして、お待ちかね、合唱の出番です。キャプラン版の指示通りに座ったままで歌い始めます。これが、ついさっきゴットヴァルトを歌ったのとは同じ団体とはとても思えないような、すばらしい合唱です。深く、緊張感あふれる響きは、ゴットヴァルトを帳消しにしてもおつりがくるほどです。最後のポリフォニーが始まるときには、いつの間にか立ち上がっていて、感動的なクライマックスを演出していました。
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