おやぢの部屋2
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BACH/Das Musikalische Opfer
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Hannelore Hinderer(Org)
Peter Thahlheimer(Fl)
Sabine Kraut(Vn)
CARUS/83.460




バッハの「音楽の捧げもの」には、プロイセンのフリードリヒ大王が作ったとされるテーマが使われていますね。バッハがポツダムのサン・スーシ宮殿を訪問した時に、大王からこのテーマを示されて、その場で3声のリチェルカーレを即興で演奏したというのは、有名な話です。大王はバッハのやり方に賛成したのでしょう。その後、フルートの名人であった大王のためにフルートをフィーチャーして作られたトリオ・ソナタや、何種類ものカノンなどをまとめて大王に献呈したのでしたね。しかし、このテーマは、ハ短調のアルペジオでまっとうに始まったものが、次の6音からいきなり減7度下がったと思ったら、また5音に上がって、そこからは今度は半音進行で下がってくるというまさに「前衛的」なメロディです。


あまりに前衛的なので、世の中には「半音階の12の音がすべて含まれているメロディで、『12音音楽』のさきがけをなしている」などと興奮気味に語る人もいるほどですが、それはウソ。確かに半音が続くのでそんな気にもなるのですが、ここに使われている音は「11」しかありません。ただ、唯一入っていない音がB♭だという点は、考慮すべきでしょう。もちろん、この音はドイツ語では「B(ベー)」になりますから、バッハにとっては重要な意味を持つ音です。大王はここで、「あとは、お前の『B』を足して、12音を完成させよ」という意味を込めていたのだとすると、それはそれですごいことなのですがね。実際、この「3声のリチェルカーレ」の場合、アルトが4度下の調で入ってくる時には、ソプラノはすかさず「B」を入れてますからね。
この曲集には楽器が指定されていないものも含まれているのですが、普通はフルート、ヴァイオリン、チェンバロ+通奏低音という編成で演奏されています。しかし、今回のCDは、チェンバロではなくオルガンが使われているという珍しいものです。これは、ヘルムート・ボルネフェルトという、教会音楽の作曲家で、長く教会のオルガニストも務めていた人による編曲、このCDの録音に使われているショルンドルフの教会のオルガンが建造された1976年に作られ、ぞこで初演されています。
一応「クワイヤ・オルガン」という言い方をされている楽器で、2段の手鍵盤とペダルという、小振りのオルガンです。ただ、ピッチはモダン・ピッチなので、いわゆる「ピリオド楽器」とのアンサンブルは難しいため、ここではフルートは1950年頃に作られた木管のベーム管、ヴァイオリンもガット弦にバロック・ボウという、折衷的な楽器を使っています。フルートは紛れもないモダン・フルートなので、こちらにある「バロック・フルート」というのは明らかな間違いです。相変わらずいい加減なインフォはあとを絶ちません。
ただ、そのインフォの中にある「優秀録音」というのだけは当たっていました。1曲目はオルガンだけによる「3声のリチェルカーレ」なのですが、そのテーマの1音1音が、それぞれにパイプの材質や組み合わせがはっきりわかるぐらい鮮やかに聴こえてくるのです。しかも、オルガンの音像を目いっぱい広げているものですから、音ごとにパイプの場所までがパン・ポットしていて、なんとも不思議な体験を味わえます。これは、ウェーベルンのオーケストラ編曲版よりもさらにスリリングな体験でした。バッハ(正確にはフリードリヒ大王)の無機質なテーマが、ウェーベルンよりもさらに精密な「点描」として聴こえてくるのですからね。
そこに、フルートとヴァイオリンが入ってくると、景色はとても穏やかなものに変わります。思い切り渋い音色が和みます。オルガンもチェロのようなストップを使って、低音に徹している感じ。最後は、やはりオルガンだけの「6声のリチェルカーレ」で終わるという構成ですが、ここではほぼフル・オルガンとなって、小さい楽器ながらも壮大さを披露して、全曲を締めています。なかなか楽しめるCDでした。

CD Artwork © Carus-Verlag
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by jurassic_oyaji | 2013-07-10 21:13 | オルガン | Comments(0)