おやぢの部屋2
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GERSHWIN/Piano Meets Percussion
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Johanna Gräbner, Veronika Trisko(Pf)
Flip Philipp, Thomas Schindl(Perc)
PREISER/PR 91226




外国のテレビドラマに登場しそうな「濃い」顔の人たちが並んでいるジャケット写真は、かなりインパクトがありますね。左端の人は「エイリアス」のジャック役のヴィクター・ガーバーそっくりですし、2人目は「デスパレートな妻たち」のリネット役、フェリシティ・ハフマンでしょうか。見てない人にとっては何の事か、ですね。すみません。
ジャケットを開くと、この4人がスプレーを吹き付けてバックの壁にピアノとドラムスのグラフィティを描いている、という設定であることが分かります。なんだか、とてもポップ。
ただ、彼ら自身はバリバリのクラシックのアーティスト、ヨハンナ・グレープナーとフェロニカ・トリスコというピアノの二人(女性)はともにオーストリア人、ウィーンを拠点にクラシックのデュオとして活躍していますし、フリップ・フィリップとトーマス・シンドルという打楽器の男性たちは二人ともウィーン交響楽団の打楽器パートの団員です。「死んどる」なんて縁起でもない名前ですが、もちろんウィーンの人はだれも気にしません。ただ、もう一人の「フリップ・フィリップ」というのは、いかにも芸名っぽい感じがしませんか?調べてみたら、本名は「フリードリヒ・フィリップ=ペゼンドルファー」といういかにもなお堅い名前でした。なんでも、彼はポップス関係の仕事(「くるり」がウィーンで録音したアルバムでは、ストリングス・アレンジで参加)もしているそうで、そんな関係でこんなポップな芸名を使っているのでしょう。そんな彼らがなんとガーシュウィンの名曲をこの編成で演奏しています。音楽の方はどれだけポップな仕上がりなのか、ちょっと期待してしまいます。
まずは、「パリのアメリカ人」。ここで、「打楽器」の中身が明らかになります。それはマリンバ、グロッケン、ヴィブラフォンといった「鍵盤打楽器」が大々的にフィーチャーされたものでした。つまり、ここではリズムだけではなく、メロディのかなりの部分を打楽器が担っているのですね。逆に、ピアノがリズムを担当してたりしていて、想像していたのとはまるで違ったサウンドが聴けるのには驚いてしまいました。中でも、ヴィブラフォンの雄弁さは光っています。うまい具合に音を伸ばすような弾き方をさせると、まるで管楽器のような味が出てくるのですね。この曲は、オーケストラとはまた違ったアプローチで、楽しさを見せてくれています。
「ラプソディ・イン・ブルー」では、グレープナー(リネットに似た方)がソロ・パートを担当しています。あまりソリストっぽくない繊細なタッチで迫りますが、そのプレイはあくまで華麗、よくあるジャズ風に崩したような弾き方はせずに、格調高く迫ります。ところが、そこに打楽器群が加わると、なんとも不思議な雰囲気が漂います。それは、同じジャズでもガーシュウィンの時代のジャズではなく、もっと後の時代、いわゆる「モダン・ジャズ」と言われるあたりのものととてもよく似たテイストが生まれているのですよ。おそらく、ヴィブラフォンの独特の味が、そんな雰囲気を作るのにかなりの寄与をしているのではないでしょうか。そうなると、ガーシュウィンがとっても「新しい」ものに感じられてくるから不思議です。
最後の「ピアノ・コンチェルト・インF」では、トリスコ(こちらは「SATC」のキャリーでしょうか)がソリスト担当。彼女はさらに繊細なピアノで、正直あまり魅力のないこの曲から、思いもよらなかったような「クラシカル」な面を発見させてくれます。特に、今までは退屈だとしか思えなかった第2楽章では、いたるところでまるでドビュッシーのような響きが聴こえてくるではありませんか。もしかしたら、ガーシュウィンは自分のへたくそなオーケストレーションで、この曲の魅力を台無しにしていたのかもしれませんね。

CD Artwork © Preiser Records
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by jurassic_oyaji | 2013-07-12 20:42 | ピアノ | Comments(0)