おやぢの部屋2
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LEDROIT/Requiem
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Jeanne Crousaud(Sop), Anna Destraël(MS)
Mathier Muglioni(Ten), Ciro Greco(Bar)
Jean-Pierre Ferey(Pf), Frédéric Ledroit(Org)
François-Henri Houbart(Choir Org)
Marie-Christine Pannetier/Groupe Vocal Pro Homine
SKARBO/DSK2137




フレデリク・ルドロワという、全く聞いたことのない名前の人が作った「レクイエム」です。ジャケットのいかにもゴシックっぽいデザインからは、そんな時代の作曲家のように思えるかもしれませんが、そんなことはなく、彼は20世紀の半ばごろに生まれた、バリバリの「現代作曲家」です。ただ、自身のプロフィールによると、彼の肩書は「ピアニスト、オルガニスト、作曲家、即興演奏家」だそうですし、実際にはオルガニストとしての方が有名なのだそうですね。
この「レクイエム」は、2012年の6月に初演されたばかりの、いわば「出来立てほやほや」の作品です。おそらく、パリのマドレーヌ寺院という、フォーレの「レクイエム」が初演された由緒ある場所で行われた、その世界初演となるコンサートのライブ録音なのでしょう。このコンサートの模様は、ネットに動画がアップされているので見ることが出来ますが、祭壇にはソリストと合唱団、そして、グランドピアノと電子オルガンが乗っています。クレジットで「orgue de choeur」、つまり「クワイア・オルガン」と表記されているのが、この電子オルガンなのでしょう。さらにもう1台、この大聖堂に備え付けのオルガンも演奏に加わっていて、それは作曲家自身が演奏しています。つまり、伴奏がオルガン2台とピアノという、とても珍しいものになっているのですね。
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「現代」のレクイエムでは、テキストに本来の典礼文以外のものを加えることが多くなっていますが、ルドロワの場合はあくまで典礼文に忠実に曲を付けています。ただ、ベースは「In Paradisum」まで入ったフルのテキストですが、フォーレのように「Sequentia」の最後のフレーズの「Pie Jesu」は独立させて「Sanctus」のあとに置かれていますし、「Sequentia」自体もモーツァルトの場合の「Tuba mirum」の最後の行以下がカットされています。さらに、なぜか「Ave Maria」が「Agnus Dei」のあとに挿入されています。
と、テキスト的には極めてオーソドックスなので油断していると、その音楽が極めて「アヴァン・ギャルド」であることに驚かされてしまうかもしれません。「レクイエム」に限ったことではありませんが、最近作られた曲というのは、おしなべて耳あたりの良い、安心して聴けるようなものが主流を占めているのではないでしょうか。まるで、大昔に戻ってしまったかのような、三和音の世界に安住しているそれらの作品は、確かに美しいものには違いありませんが、何か物足りない気がするのも事実です。
おそらく、ルドロワの場合は、そのような悪しき風潮には真っ向から抵抗したかったに違いありません。出来上がった「レクイエム」は、「死者を悼みなさい」とか、「安息を与えなさい」などといった軟弱なテキストからは想像もできないようなヘビーな仕上がりになりました。人によっては「なんじゃくぉりゃ」と思うかもしれません。
まず、テキストを伴わない「Prélude」がピアノ・ソロで演奏されます。叩きつけるような低音(作曲者は「ハンマー」と言ってます)の持続の上に広がる不協和音の世界、これこそが、「安らぎ」などとは無縁の「死の苦痛」に直面せざるを得ない「レクイエム」の開幕を告げるものです。この作品の伴奏にピアノという楽器が選ばれた訳も、これで納得できるはずです。オルガンだけでは、このような硬質な世界は生まれません。
ソロや合唱は、ひたすら「美しさ」からは遠い表現に終始しています。正直、聴いていると辛くなるような場面もありますが、それだけ強いメッセージは伝わってくるのではないでしょうか。
フォーレやデュリュフレに比べたら、ここの「Pie Jesu」の異様さは際立ちます。オルガンのドローンの中で、メゾ・ソプラノはたった一人で砂漠の中に放り出された人(作曲家が、そう書いてます)を演じます。もはやメロディとは言えない叫びは、いったい誰に向けられたものなのでしょう。

CD Artwork © Skarbo
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by jurassic_oyaji | 2013-07-16 20:53 | 合唱 | Comments(0)