おやぢの部屋2
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LIGETI/Orgelwerke
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Dominik Susteck(Org)
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ジェルジ・リゲティが作ったオルガンのための作品は、全部で3曲しかありません。1962年に作られた「Volumina」と、1969年に作られた「2つのエチュード」に含まれる「Harmonies」と「Coulée」です。それだけでは1枚のアルバムにはなりませんから、ここで演奏している1977年生まれの若いオルガニスト、ドミニク・ズステックは、同じリゲティが1953年に完成させたピアノのための11曲の小品から成る「Musica ricercata」をオルガンで演奏して余白を埋めるとともに、自作のインプロヴィゼーションも収録して、なんともエキサイティングなアルバムを作ってくれました。
ここでズステックが演奏しているのは、彼が2007年からオルガニストを務めている、ケルンの「Kunst-Station Sankt Peter」という、教会でありながら現代アートの活動拠点ともなっている施設に備えられている、2つのオルガンです。一つは祭壇に向かって左側の床の上に設置されている小さなクワイア・オルガン、そして、もう一つは祭壇の向かい側のバルコニーの上にある大オルガンです。クワイア・オルガンは手動アクションで直接演奏しますが、大オルガンの方はすべて電動アクション、コンソールは本体からはかなり離れたところにあります。さらに、このコンソールの鍵盤は、手鍵盤も足鍵盤(ペダル)もクワイア・オルガンと直結していますから、前と後ろのオルガンを同時に鳴らすことだってできます。写真を見ると、カラフルなストップのボタンに液晶モニター、まさにこれは、近未来的なオルガンの姿なのでしょう。
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ただ、このオルガンのコンセプトは、一見「未来」に向けられているようで、実は昔からのオルガンの別の面を受け継いでいるようなところもあります。それは、通常の、パイプに風を送って音を出すストップ以外に、「打楽器」を演奏させるストップが数多く備わっている、という点です。太鼓とかシンバルとかグロッケンといった「鳴り物」、これは、「オルガン」と同義語である「オルゴール」では、昔から使われていた手法です。
最初に演奏されているのが、そんなオルガンの機能を存分に盛り込んで、オリジナルのピアノ曲の、幾分スタティックなイメージを天地が引っくり返るほどに変えてしまった「Musica ricercata」です。つまり、この原曲はリゲティを偏愛していた映画監督のスタンリー・キューブリックが、彼の最後の作品である「アイズ・ワイド・シャット」の中で用いてなんとも不気味な雰囲気を醸し出していたものですが、このズステックのバージョンからはとてもあの映画のエロさなどは感じられないということでしょうか。
ご存知のように、この曲集は1曲目は単音しか使っていなかったものが、曲を追うごとに使う音の数が増えていくという作られ方をしています。その、最初の「A」の音のすさまじいこと。いや、すごいのは「音」が終わった後なのですが、グリッサンドがかかってピッチが下がっていくのですよね。これは、送風ファンを切ってパイプへの風圧を下げるというとんでもない裏技、いや、反則技です。一応合法ですが(それは「風俗」)。そのあとは、ひたすらオクターブ違いの音だけをリズミカルに弾くという場面なのですが、そこに音程のない打楽器のストップが加わります。これもオリジナルのコンセプトからすれば見事な「反則」、もちろん、エンディングの「D」の音でも、堂々とグリッサンドを聴かせてくれていますよ。こんな調子で、聴きなれたピアノ曲を見事なまでにオルガンによる「エンターテインメント」に変えてしまった、とても痛快なパフォーマンスです。
ですから、最初からオルガンのための作られたものでも、ハッとさせられるような瞬間は数知れず、「Volumina」なんてこんなに楽しい曲だったことを再発見です。もちろん、ズステックの自作も、このオルガンの機能をフルに使ってのやりたい放題、楽しくないはずがありません。

CD Artwork © Wergo, a division of Schott Music & Media GmbH
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by jurassic_oyaji | 2013-07-20 23:19 | 禁断 | Comments(0)