おやぢの部屋2
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POULENC, HINDEMITH etc./Flute Works
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Anne-Catherine Heinzmann(Fl)
Thomas Hoppe(Pf)
AUDITE/92.667(hybrid SACD)




プーランク、ヒンデミット、デュティユー、ムチンスキー、そしてマルタンという、20世紀に活躍した作曲家によるフルートとピアノのための作品の定番を集めたアルバムです。すでに今まで数多くの録音がある中で、今更こんな「ポピュラー」な曲をわざわざ聴く必要性はほとんど感じられませんが、フルート・ソロには珍しいSACDであることと、ジャケット写真のブロンドの女性に不思議な魅力が感じられたので、聴いてみることにしました。
この女性はアンネ=カテリーネ・ハインツマンというドイツのフルーティスト、ごくノーマルです(「パンツマン」ではありません)。年齢は不詳ですが、1999年からフランクフルト歌劇場のオーケストラの副首席奏者、さらに2005年には神戸国際フルートコンクールに出場していますから、まあ、それぐらいのお年なのでしょう(このコンクールの年齢制限は33歳以下)。この時の成績は、一次予選は通ったものの、二次予選で敗退というものでした。三次予選通過がファイナリストですから、かなり不本意な成績だったのではないでしょうか。ちなみに、この4年前の同じコンクールで1位となったサラ・ルヴィオンは、彼女と同じ職場で首席奏者になっています。
ジャケット(というか、ブックレット)で惹かれたのは、ハインツマンの顔だけではありませんでした。
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裏側にあった楽器の写真も、ちょっとユニークなものです。左手の小指で押さえているキーが、なんだか表のGisキーに直結しているようには見えませんか?というより、キーカップの上に、本来あるはずのないキーが乗っているように見えますね。つまり、ここでは左手の小指によってGisキーを「閉じて」いるのですよね。ということは、これは普段はそのトーンホールが開いている「Gis open」という、珍しいシステムの楽器のように見えます(その「Gis open」の楽器の数少ない使い手の一人であった、元NHK交響楽団の首席奏者、中野富雄さんが、先日お亡くなりになりました。謹んでご冥福をお祈りいたします)。しかも、このキーにはE-mechanism用の連結もありますから、3オクターブ目のEは普通の運指で出せるんですね。
録音が行われたのは、ベルリンのイエス・キリスト教会という、カラヤンが愛用した場所です。オーケストラだけではなく、このようなソロ楽器の場合も良い響きが得られるようで、ピアノもフルートもとても美しい残響を伴った、芯のある音が捉えられています。録音フォーマットは24/44.1というしょぼさですが、とても透明性のある音が聴けますよ。そこで、ピアノ伴奏のトーマス・ホッペの熟達の芸が聴けるわけですが、最初のプーランクあたりでは、そのソリストに対する気の使い方があまりに過剰なために、かえって音楽の流れを損なうようなところがあったりしますから、本当に伴奏というのは難しいものです。
いや、伴奏者だけを責めるわけにはいきません。フルートのハインツマンも、このプーランクのソナタやヒンデミットのソナタ、そしてデュティーユのソナチネなどの前半の曲目では、なにか守りに入った吹き方が目立って、かなり不満が募ります。デュティーユあたりはもっと軽やかに進んで行って欲しいな、こんなんだから、神戸はダメだったんだな、と思えてしまいます。とても素直でいい音なんですけどね。
ところが、後半のムチンスキーのソナタになったとたん、俄然音楽が生き生きとしてきましたよ。こういう、ジャズ風のシンコペーションを多用したノリの良い曲の方が、彼女には向いているのでしょうか。ピアニストとの絡みも全く遠慮なく対決している感じ、終楽章のカデンツァも、まるで人が変わったような軽やかさです。最後のマルタンのバラードも絶品でした。ここでは、他の奏者がつい安易に通り過ぎてしまうようなところで、なにか絶妙な表現があって、とてもスリリング、こういうことが全ての曲で出来ていれば、神戸でも1位を取れていたでしょうに。

SACD Artwork © Ludger Böckenhoff
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by jurassic_oyaji | 2013-08-09 20:56 | フルート | Comments(0)