おやぢの部屋2
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BRITTEN/War Requiem
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Galina Vishnevskaya(Sop), Peter Pears(Ten)
Dietrich Fischer-Dieskau(Bar)
Benjamin Britten/
The Bach Choir, Highgate School Choir
London Symphony Orchestra & Chorus, Melos Ensemble
DECCA/478 5433(CD+BD)




今年は、ベンジャミン・ブリテンが生まれてから100年目となる記念の年です。さらに、彼の代表作(というのには、いろんな立場の人からの異論があるでしょうが)である「戦争レクイエム」が作曲家自身の指揮によってこのレーベルに初録音されてから、ちょうど50年目にあたる年でもあります。
この作品が初演されたのは1962年の5月のことでしたが、その時にはブリテンが想定していた「ソ連(当時)、イギリス、ドイツという、第二次世界大戦の際の交戦国同士の歌手が一堂に会して、和解を印象付ける」というコンセプトが、ソ連代表のヴィシネフスカヤの不参加によって完結していませんでした。それが、翌年、1963年1月に行われたこの録音によってしっかりと実現したわけですから、ブリテンにしてみればこの録音こそが完全な形での初演だったことになります。
そこで企画されたのが、この録音の決定的なデジタル・リマスター盤の制作です。そのために、今回はオリジナルのマスターテープから直接24bit/96kHzでデジタル・トランスファーを行い、後世に残すことが出来る品質のハイレゾ・データを作ることになりました。ですから、今回のパッケージには、そんな素材から作られたCDとともに、そのPCMデータがそのまま収められたBDオーディオが同梱されています。
ご存じのとおり、この録音のプロデューサーはあのジョン・カルショーです。1963年と言えば、彼はワーグナーの「指環」を録音している真っ最中ですよね。1962年に「ジークフリート」、1964年には「神々の黄昏」をウィーンのゾフィエンザールで録音した、その間に、ロンドンのキングズウェイ・ホールでこの録音を行ったことになるのです。ウィーンではゴードン・パリー、ロンドンではケネス・ウィルキンソンというエンジニアを抱えた、まさに、DECCAの黄金期の録音ですから、それは非常に価値のある仕事に違いありません。「指環」に関しても、やはりBDオーディオがリリースされていましたから、このフォーマットのすごさをすでに味わっているだけに、期待は高まります。
しかし、「指環」の時には、すでにマスターテープの劣化が進んでいたため、現代のスペックでのハイレゾ・データではなく、1997年という「大昔」のデジタル・データを使わざるを得なかった、という事情があったことに、少しの不安が募ります。「指環」ではもうマスターテープは使い物にならないほどに劣化していたというのに、同じ時期の「戦争レクイエム」では、そんなことはなかったのでしょうか。それについては、ブックレットの中で「オリジナル・アナログ・マスターは、以前に比べてさらに『壊れやすく』なっている」と述べられているのと同時に、スプライシングの補修をしている写真が掲載されています。これを見ると、単にはがれたところを直せば元通りになるような気になりますが、本当は磁性体そのものの劣化の方がより深刻なはずなのですがね。
しかし、最終的にBDで聴ける音は、そんな懸念を振り払うような、すばらしいものでした。リマスタリング・エンジニアは「指環」と同じフィリップ・サイニーですから、彼の仕事ならマスターの劣化はかなり補正出来るということなのでしょう。
実は、手元には1985年にCD化されたものがあります。それは今から見たらかなり荒っぽいマスタリングの産物で、そもそもトランスファーの際のドロップアウトなどもそのままになっているぐらいのものなのですが、例えばヴィシネフスカヤの歌う「Lacrimosa」などは、明らかに今回のBDよりも充実した音が聴けます。この、アナログ・マスターがまだしゃんとしていた頃に、24/98でトランスファーする技術があったなら、もっとすごい音が聴けたことは間違いないでしょう。まさに文化遺産そのものであるアナログテープの劣化は、防ぎようがありません。後世に残したいと本気で思っているのなら、残された時間は極めて限られています。

CD and BD Artwork © Decca Music Group Limited
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by jurassic_oyaji | 2013-08-17 23:46 | 合唱 | Comments(0)