おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
MOZART/Requiem
c0039487_2120507.jpg



Anna Prohaska(Sop), Sara Mingardo(Alt)
Maximilian Schmitt(Ten), Rene Pape(Bas)
Claudio Abbado/
Bavarian Radio Choir, Sweden Radio Choir(by P. Dijkstra)
Lucerne Festival Orchestra
ACCENTUS MUSIC/ACC10258BD(BD)




2012年8月にルツェルン音楽祭で演奏されたモーツァルトの「レクイエム」は、同じ年の9月にはそのコンサートが丸ごとBSで放送されていました。つまり、当日はまずベートーヴェンの「エグモント」を、ソプラノ・ソロとナレーターを入れて劇音楽として演奏した後に、「レクイエム」が演奏されていました。今回、その時の映像のうちの「レクイエム」だけがDVDBDでリリースされました。「コンサート」ではなく、「作品」として届けたい、ということなのでしょうか。「エグモント」の映像などというエグいもんはなかなかありませんから、ぜひ一緒に出して欲しかったものです。
いずれにしても、アバドが指揮をするモーツァルトの「レクイエム」であれば、「版マニア」としては聴き逃すわけにはいきません。なんたって、彼が1999年にザルツブルクでカラヤンの没後10周年記念として演奏した同じ曲のライブ録音ときたら、「版的」にはとんでもないものだったのですからね。それについては、こちらにまとめてありますから、ぜひご覧になってください。とにかく、バイヤー版だと思って聴いているといきなりレヴィン版になったり、その同じ曲の中でもバイヤー版の音形に置きかえられていたりと、なんとも脈絡のない「いいとこどり」なのですからね。
ですから、今回のコンサートの映像を観るにあたっては、アバドのこの作品に対する、主に「版」に関してのアプローチがどのように変わったのか、あるいは変わらなかったかが最大の関心事となるのは当然のことです。
期待通り、放送の時には、最初にこの「版」に関してのコメントがテロップで出ていました。今回のDVDBDの販売元によるインフォにも同じ趣旨のことが書かれていますから、おそらく同じものが使われているのでしょう。それは

「聖なるかな」はロバート・レヴィンによる校訂版、それ以外はフランツ・バイヤー版で演奏される

というものでした。「Sanctus」はレヴィン版だが、それ以外はバイヤー版だということですね。かつてあんな複雑なことをやっていたアバドが、13年経つとこんなものすごく分かりやすいやり方を取るようになってしまったのでしょうか。
しかし、このコメントは全くの事実誤認であることが、すぐに分かります。確かに「サンクトゥス」はレヴィン版のようですが、そのあとの「Benedictus」ときたら、最初はバイヤー版でやっているのに、オーケストラの間奏になったら、いきなりレヴィン版に変わってしまうのですからね。ですから、おそらく今回のアバドの楽譜は、基本的にはあの13年前のものと同じなのではないかという気がします。この「Benedictus」の間奏などは、この曲を聴き慣れている人ならだれでもバイヤー版でないことはすぐ分かるはずなのに、テロップやインフォを書いた人は実物を聴いていなかったのでしょうか。
そんな「版」の面白さとともに、これは演奏もとても充実していたのがうれしいところです。まず合唱は、バイエルン放送合唱団とスウェーデン放送合唱団の合同演奏、お気づきでしょうが、どちらの団体もあのペーター・ダイクストラが音楽監督を務めていますね。これはまさに現時点では世界最強のタッグなのではないでしょうか。事実、ひたすら渋い音色で、素晴らしいピアニシモを聴かせてくれるこの合唱団には、もう耳が引きつけられっぱなしでした。
ソリストも、素晴らしい人が4人揃っていましたよ。一番気に入ったのが、ソプラノのアンナ・プロハスカ。この曲にはぴったりの澄みきった声が良いですね。ただ、映像ではちょっとぶっきらぼうな歌い方で、別の怪しい魅力を放っています。この4人は、ソロはもちろん、アンサンブルがとても素敵でした。
演奏が終わっても、アバドは1分以上動こうとしませんでした。その間、会場は完全な静寂、これは、ちょっと背筋が寒くなるような体験でした。

BD Artwork © Accentus Music
[PR]
by jurassic_oyaji | 2013-08-19 21:22 | 合唱 | Comments(0)