おやぢの部屋2
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Great Works for Flute and Orchestra
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Sharon Bezaly(Fl)
Neeme Järvi/
ResidentiOrkest Den Haag
BIS/SACD-1679(hybrid SACD)




シャロン・ベザリーの新譜、確かに「マルP(この原盤権をあらわすマークはPhonographの頭文字の略なんですってね)」は2013年ですが、品番は最新のものは2000番を超えているのに1600番台、しかも録音は2007年と2008年です。どうやら、このレーベルの品番はリリース時ではなく、録音時に準じているようですね。
ですから、最近では正直に録音フォーマットを表示していますが、それは44.1kHz/24bitという、SACDにするにはもったいないような一昔前のスペックでした。確かに、オーケストラの弦楽器の音などは、最新スペックのものに比べると物足りなさが残ります。
タイトルの通り、オーケストラとフルートのための「名作」を集めたアルバムですが、伴奏のハーグ・レジデンティ管弦楽団を、首席指揮者のネーメ・ヤルヴィが指揮をしているのがすごいところです。
その「名作」は、メインがニルセンとライネッケのコンチェルト、シャミナードのコンチェルティーノ、それにプーランクのソナタをレノックス・バークレーがオーケストラに編曲したものという大盤振る舞い、それにグリフィス、チャイコフスキー、リムスキー・コルサコフの小品も加わっていますから、全7曲という超大盛りです。
まず、このところ生誕150年を控えて何かと盛り上がっているニルセンのフルート協奏曲が入っているのがありがたいところです。実は、この曲は最近ほかのレーベルからも何種類かリリースされていますから、ベザリーももしかしたら今までリリースのタイミングを見計らっていたのかもしれませんね。それは、確かにベザリーらしさを存分に味わうことのできるニルセンでした。とにかく、テンポが滅法速くて、今まで抱いていたこの曲のイメージが一変してしまうほどの印象があります。ほとんど神業に近いテクニックで、難しいパッセージを信じられないほど滑らかに演奏しているのは爽快そのものです。ただ、ここまで早く演奏することが、果たしてニルセンの曲にふさわしいのか、という違和感は残ります。決してテクニックをひけらかすのではなく、もっと一つ一つの音が持つ意味をしっかり味わいたいな、という思いですね。
その点、ライネッケのフルート協奏曲の場合は、第1楽章などは、細かい音符にこだわらずいくら早く吹いてもらっても構わないような音楽ですから、ベザリーの演奏はとてもキレが良く感じられます。ところが、第2楽章となると、そうはいきません。こういう、しっとりとロマン派ならではの情感を歌い込んでほしい楽章こそが、ベザリーの最も苦手とするところ、それは期待を裏切らない残念な結果に終わっています。第3楽章も、単に指が動くだけでは、本当の意味の軽やかさは出てこないのだな、ということを痛感させられます。
プーランクでも、やはり真ん中の楽章では、大きなフレーズの中で滑らかに歌ってほしいところが、一つ一つの音符ごとに音をふくらますというベザリーのクセが、無残な結果を生んでいます。これは、ソロ以外のオーケストラの中のフルートや管楽器が大活躍するバークレーのぶっ飛んだオーケストレーションに見事にこたえているバックのメンバーに拍手、です。チケットの転売はやめましょう(それは「オークション」)。
ベザリーのテクニックのすごさをよく知っているフィンランドの重鎮作曲家、カレヴィ・アホが、わざわざこの録音のために編曲を買って出たリムスキー・コルサコフの「熊蜂の飛行」は、あの伝説的なゴールウェイの演奏とほぼ同じテンポで半音階を吹ききるという、すごい仕上がりです。しかも、ところどころにタンギングを入れているところもありますから、レガートだけのゴールウェイよりもポイントは高くなっています。このあたりが彼女の本領発揮なのでしょう。

SACD Artwork © BIS Records AB
by jurassic_oyaji | 2013-08-23 21:35 | フルート | Comments(0)