おやぢの部屋2
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BRUCKNER/Symphony No.4
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Franz Welser-Möst/
The Cleveland Orchestra
ARTHAUS/108 078(BD)




ウェルザー=メストとクリーヴランド管は、これまでに何度かBD(とDVD)によるブルックナーの交響曲の映像をリリースしてきました。「7番」、そして前回の「8番」までは、彼らの本拠地、クリーヴランドのセヴランス・ホールでの収録でしたが、今回の「4番」では、ついにブルックナーの「本拠地」、ザンクト・フローリアンでの映像が楽しめます。
ただ、このBDが出た時点では、いくらブルックナーゆかりの地での映像とは言っても、そんなものは今までにいくらもありましたからそれほど食指は動きませんでした。代理店の案内などでも、特に「稿」や「版」については触れられていなかったので、そもそも魅力を感じませんでしたし。しかし、最近このBDと同じソースが、BSで放送されたのですね。こういうことはよくあって、全く同じクオリティのものを基本的に無料で見る、あるいは録画できるのですから、商品のパッケージを買ってしまった人は悔しいでしょうね。それよりも、この時の番組案内では、きっちりこの時の楽譜が「1888年稿 コースヴェット校訂」であるとの情報が表記されていたのです。これは大変です。
ご存知のように、この「コースヴェット版」というのは、2004年に出版されたばかりの新しい楽譜です。しかし、年代を見ればお判りでしょうが、これはこの作品が最初に出版された時のものと同じ内容の楽譜なのです。つまり、かつては「レーヴェ版」とか、「初版」、「改訂版」、時には「改竄版」などという虐称で呼ばれていたあの楽譜のことですね。要は、出版にあたって弟子たちが勝手に手を入れてしまった楽譜、という位置づけでしたから、「原典版」であるハース版やノヴァーク版が出版されればそれは完全に無視される運命にあるものでした。実際、録音も、この楽譜しかなかった頃の「巨匠」による演奏しか残っていません。
しかし、最近では、アメリカの音楽学者ベンジャミン・コースヴェットという人が行った研究によって、フェルディナント・レーヴェ、ヨーゼフ・シャルク、フランツ・シャルクという3人の弟子によって用意されたこの楽譜にはブルックナーの意思が十分に反映されていて、まさに「最終稿」と呼ぶにふさわしいものである、ということが判明したのだそうです。それは、コースヴェットによって校訂された楽譜が、国際ブルックナー協会の全集版からこの交響曲の3つ目の形態として出版されるという、いわば「お墨付き」を得ることによって、確固とした市民権を持つことになりました。
ウェルザー=メストは、「8番」では「第1稿」という非常に珍しい楽譜を使って演奏していました。ですから、その流れで行けば、「4番」も「第1稿」が期待されるところですが、そうではなくこの「コースヴェット版」を使ってくれました。実は、これは今までCDでは2種類しか出ていませんでした。それが、いきなり映像で見られる、というのですからね。もちろん、これが映像としては世界初のものになるはずです。なんたって、「ニューイヤー・コンサート」に出演した指揮者がこの楽譜で演奏するのですから、その宣伝効果は計り知れないものです。これからは、一気に「コースヴェット版」による演奏が増えるかもしれませんね。
この映像の監督は、あのブライアン・ラージ、冒頭の天井画のアップから始まって、長い時間をかけて引いていくというシーンから、彼の持ち味が十分に発揮されています。奇抜さはありませんが、まるでこの会場に宿っているブルックナーの魂を丁寧に探し出しているようなカメラワークは、とても味があります。
演奏も、かつて「改竄版」と言われていた時代の演奏とは、全く異なっています。決して煽り立てることなく、淡々と楽譜を音にしているという姿勢、こういう演奏であれば、追加されたティンパニや、部分的なカットの正当性も、きっちり納得できるかっと思います。

BD Artwork © Arthaus Musik GmbH
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by jurassic_oyaji | 2013-08-31 23:01 | オーケストラ | Comments(2)
Commented by とおりすがり at 2013-08-31 23:17 x
AMAZONでは、ずっと前からコースヴェット版と案内されていましたので、4月に購入しました。テレビでも昨年すでに放映されていた記憶があります。http://p.tl/jSiu
Commented by jurassic_oyaji at 2013-08-31 23:36
通りすがりさん。
そうだったんですか。番組表を見落としていたのでしょうね。
しかし、amazonの「第3楽章のスケルツォの繰り返しをなくした」というコメントは、大胆ですね。