おやぢの部屋2
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BACH/Messe in h-moll
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Celestina Casapietra, Renate Franck-Reinecke(Sop)
Véra Soukupová(Alt), Eberhard Büchner(Ten)
Siegfried Vogel(Bas), Walter Heinz Bernstein(Org)
Herbert Kegel/
Rundfunk Sinfonieorchester und Chor Leipzig
WEITBRICK/SSS0138/0139-2




ドイツの放送音源など貴重なアイテムを掘り起こして、コアなマニアに紹介することに命を懸けている、実質的には日本のレーベルWEITBRICKは、まさに「珍盤・奇盤」の宝庫です。そこから、ケーゲルが指揮をしたバッハの「ロ短調」という、おそらく今までは公式の商用録音などはなかったはずの、まさに珍盤の極みとも言えるCDがリリースされました。
注文してからほぼ1年、ついに現物が手元に届いたときには、もうそれだけで満足してしまいたくなるほどでした。なんともあか抜けない、意味不明のジャケットさえも笑って許せるほどです。なんと言っても、ブックレットには英語、ドイツ語と並んで日本語のライナーノーツまで掲載されているのですからね。
ところが、そのライナーを書いた人は、あちこちで目にする自称音楽評論家、ということは最初に日本語の原稿があって、それを英訳、独訳したものが載っているということだったんですね。確かに、これは「日本のレーベル」でした。
このCDのライセンス元は「Deutsches Rundfunkarchiv」、つまり、「ドイツ放送アーカイブ」、そこと並んで、もう一つライセンス元が表記されていて、それは「アンネローゼ・ケーゲル夫人」、ヘルベルト・ケーゲルの奥さんです。アーカイブの権利は、この奥さんが持っているのでしょうね。なんでも、この録音のCD化は彼女の強い希望によって実現したそうなのです。
なにはともあれ、そんな貴重な録音を味わってみなければ。まず、これは1975年のライプツィヒでのコンサートを録音したものですが、正規に、Deutsche Schallplattenあたりがスタジオで録音したものとはまるで違うひどい音であることは、覚悟しなければいけません。まるでRIAAのイコライジング補正が行われていない音源みたいな異様に高域が強調された音で、イライラさせられます。このあたりは、自分の耳で「補正」をかけるしかありません。
音楽は、この時代の「巨匠」のテイストにあふれたものでした。まだピリオド楽器の勢力が及んでいない、ある意味幸福な時代の大オーケストラによるバッハの典型的な形なのでしょう。弦楽器のトゥッティからは、あふれるような豊穣な響きが聴こえてきますし、管楽器奏者も思いの丈を存分に込めた、「熱い」音楽を聴かせてくれています。合唱も、「バロック唱法」とは無縁の、オペラティックですらある声で歌い上げています。これはこれで、この時代の一つの「すばらしい」演奏の一例には違いありません。
とは言っても、やはり今聴くのには少しの忍耐が必要だと感じてしまう点も、ないわけではありません。「Domine Deus」のフルートのオブリガートなどは、もはや「その時代」でしか通用しないとてもバッハとは相容れない様式の奏法です。この曲はともかく、後半の「Benedictus」でこれをやられたらたまらないな、という不安がよぎります。
ところが、そのフルート・ソロが大活躍するはずの曲で聴こえてきたのは、なんとヴァイオリン・ソロだったのです。これには驚きました。実は、バッハの自筆稿ではこのソロについては何の指示もないために、旧バッハ全集では「ヴァイオリン・ソロ」とされていました。それを、1954年に新バッハ全集の第1弾として刊行されたフリードリッヒ・スメント校訂の「ロ短調」では、音域などから「フルート・ソロ」に変更されたのです。実は、ケーゲルはちゃんと新バッハ全集を使って演奏していることは、「Gloria」の「Et in terra pax hominibus」のリズムからわかります。その上で、ここで敢えてフルートではなくヴァイオリンを用いたのは、何か特別な思い入れでもあったのでしょうか。もっと古臭い様式に支配されていたオットー・クレンペラーの1967年の録音でさえ、フルートで演奏されているというのに。
何にしても、ヴァイオリン版「Benedictus」入り「ロ短調」という又とない「珍盤」が手に入りました。

CD Artwork © Melisma Musikproduktion
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by jurassic_oyaji | 2013-09-04 20:24 | 合唱 | Comments(0)