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GRIEG/Complete Symphonic Works Vol. III
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Eivind Aadland/
WDR Sinfonieorchester Köln
AUDITE/92.669(hybrid SACD)




ドイツのAUDITEレーベルでは、ケルン放送曲(WDR)との共同制作で、ノルウェーの作曲家エドヴァルド・グリーグの「交響的作品」の全集をリリースし始めています。これは最終的には全5枚となるそうなのですが、グリーグにそんなにオーケストラのための作品があったなんて、ちょっとした驚きです。今回は3枚目ですが、4枚目以降にはおそらく作品番号が付けられていない「交響曲ハ短調」などの「秘曲」も収録されるのでしょう。
指揮者のアイヴィン・オードランという人は全く初めて聞く名前、かつてノルウェーのベルゲン・フィルのコンサートマスターも務めていたヴァイオリニストなのだそうです。彼自身もベルゲンの生まれだそうで、グリーグに関しては、その共感に満ちた表現が各所で好評を得ているのだとか。
2年ほど前に1枚目が出た時には、定石通り彼の最も有名なオーケストラ曲である「ペール・ギュント組曲」がメインになっていました。これが、聴き慣れた「ペール・ギュント」とは一味違っていて、田舎くささがギュッと詰まっていてなかなかいいんですよね。よくある「名曲集」などに収められている大指揮者による演奏とは、なんだか次元が違うような、とても不思議な味わい、もしかしたら、今まで抱いていたグリーグのイメージは、彼本来のものではなかったのでは、と思わせられるような演奏でした。さらにそのアルバムを魅力的にしていたのは、録音の素晴らしさでした。録音はケルンの放送局のスタッフによるものなのでしょうが、会場のケルン・フィルハーモニーの響きとSACDのスペックとが見事にマッチして、とても生々しい、まるでアナログ録音のような豊穣な音に仕上がっています。トゥッティでの各楽器のセパレーションも見事ですが、なによりも弦楽器の肌触りが極上です。
2枚目では、弦楽合奏のための作品が集められていました。ここで聴かれるその弦楽器の響きは、滑らかさにうっとりさせられる、というのではなく、もっとざらついたギラギラするような音、それこそが、グリーグの土臭さを伝えるものだ、と感じられるサウンドでした。
この3枚目には、それほど有名な曲は含まれてはいません。その中で、比較的なじみのあるのが「抒情組曲」でしょうか。これは、グリーグが生涯にわたって作り続けた、まさにライフワークとも言うべきピアノ曲集「抒情小曲集」(全10集)から、1891年に作られた「第5集」に含まれる曲を1905年にオーケストラ用に編曲したものですね。ただ、この組曲の成立に関してはちょっと複雑な事情があったようで、グリーグが編曲する前に、すでにアントン・ザイドル(ブルックナーの交響曲第4番のアメリカ初演を行った指揮者。ブルックナーは、このために楽譜に一部手直しを施したのですが、それが「ノヴァーク版」に反映されています)が、6曲から成る原曲から2曲カットして「ノルウェー組曲」というものを作っていましたが、グリーグは曲を一部差し替えて、新たにオーケストレーションを施して出版したのです。このSACDには、その真正グリーグ版の組曲と一緒に、その際にカットされたザイドル編曲による「鐘の音」が収録されています。グリーグ自身はこの曲について「これを聴いた人は、私が気が違ったのではないかと思うだろう」とまで言っていたそうですが、まるでドビュッシーのような響きが聴こえてくるこの作品は、たしかにグリーグのイメージを一新させるだけのものがあります。
その他にも、メンデルスゾーンあたりの影響を色濃く残しながらも、随所で民族的な音階が聴こえてくる序曲「秋に」や、「ペール・ギュント」の前に作られたもう一つの劇音楽「十字軍兵士シーグル」も聴きごたえがあります。「シーグル」の3曲目、美しいチェロの四重奏が聴かれる「忠誠行進曲」などは、運が良ければもうすぐ「生」で聴けるかもしれませんよ。

SACD Artwork ©c Ludger Böckenhoff
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by jurassic_oyaji | 2013-09-08 21:25 | オーケストラ | Comments(0)