おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
TCHAIKOVSKY/Symphony 5, Swan Lake Suite
c0039487_21582019.jpg



Christian Lindberg/
Arctic Philharmonic Orchestra
BIS SACD-2018(hybrid SACD)




2009年に出来たばかりの、世界で最も新しいオーケストラ「アークティック・フィル」の新譜です。このオーケストラは、「北極フィル」というその名前の通り、ノルウェー北部の北極圏の都市を中心に活躍しています。ジャケットには、「北極」を強調したこんな「エア・オーケストラ」の写真が。
c0039487_21591932.jpg

設立にあたってはノルウェー政府が全面的にバックアップ、世界中から優秀なプレイヤーが集められたそうですが、最近の、オーケストラを「つぶす」ことに熱心などこかの国とは、文化の次元がまるで違います。そんな、文化的に貧しい国が地震の被害にあって、原子力発電所がメルトダウンを起こしてしまったりすれば、近づきたくなくなるのは当然のこと、このオーケストラは、2011年6月に予定していた日本公演を、きっぱりとキャンセルしてくれたのです(同じ時期に、メトロポリタン歌劇場は、本体は来日しましたが、メインの歌手がかなりキャンセルしていました)。
しかし、それから2年半も経てば、日本の国のトップが「震災から完全に復興した」とか、「原子力発電所の事故は、完全にコントロールされている」とか、滑舌の悪い口調で全世界に向けて声高に叫ぶことが出来るようになるのです。そう、信じられないことですが、知らないうちに日本はオリンピックだって招致出来るほどの豊かで安全な国になっていたのですよ。ですから、きっと「北極フィル」だって、今だったら喜んで来てくれることでしょう。
BISからの2枚目となるこのアルバムでは、チャイコフスキーの「交響曲第5番」が演奏されています。ここで指揮をしている、このオーケストラの初代首席指揮者、クリスティアン・リンドベリ(もちろん、あのスウェーデンが生んだ、天才トロンボーン奏者)にとってはこの曲は特別な思い入れのあるものなのだそうです。まず、10歳の時に初めて聴いた交響曲が、この曲、そして、19歳の時に初めてオーケストラの中で吹いた交響曲もこの曲、さらに、北極フィルが出来て間もない2010年に、ゲルギエフの招きでマリインスキー劇場で演奏したのもこの曲なのですね。つまり彼は、この曲が1888年に初演されたまさにその都市で、自分のオーケストラとこの曲を演奏したことになります。
そんな「由緒」ある曲が、24bit/96kHz相当の音で聴こえてくれば、素晴らしくないわけがありません。おそらくリンドベリは、かつてこの曲を聴いて感動したそんな「聴き手」の気持ちになって演奏していたに違いありません。ここからは、「聴き手」にとってはうざったいとしか感じられない演奏者の押しつけがましい思い入れなどは、きれいさっぱりと消し去られ、音楽そのものが持つ魅力がストレートに伝わってきます。
早目のテンポで始まった第1楽章は、クラリネットのユニゾンが淡々と歌うのをまわりが盛り上げてふさわしい情景と作るという造形、そこからはよくある深刻さなどは聴こえてきません。第2楽章も、ホルンのソロは淡白そのもの、次の主題を担当するクラリネットなどは、とても明るい音楽を前面に出してきます。ここでも、バックの管楽器の裏打ちなどは完璧です。第3楽章は、あまり煽ることはしないで、中間部の木管が入り組んだとことも余裕を持って処理できるような配慮です。そして、フィナーレは、あくまで前向きの行進曲です。聴き終った時には、高揚感というよりは、すがすがしさが残ります。
ところが、カップリングの「白鳥の湖」では、なにかチグハグなところが多いのですね。木管のアンサンブルもなんだか方向性が定まらないようですし、ミハイル・シモニヤンという売り出し中の若いソリストが加わった「情景」でも、ヴァイオリン・ソロだけが突出していて、相方のチェロ・ソロなど、肝心のオーケストラの主張が聴こえてきません。このあたりが、「若い」オーケストラの課題なのかもしれませんね。

SACD Artwork © BIS Records AB
[PR]
by jurassic_oyaji | 2013-09-10 21:59 | オーケストラ | Comments(0)