おやぢの部屋2
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BACH/Six Brandenburg Concertos
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John Butt/
Dunedin Consort
LINN/CKD 430(hybrid SACD)




これまでに、ほかの団体とは一味違った楽譜を使ってバッハやヘンデルの宗教曲をLINNレーベルに録音してきたスコットランドのピリオド・アンサンブル、「ダンディン(ダニーデン)・コンソート」が、初めて声楽を含まないインスト物をリリースしました。ちょっとおしゃれに決めてます(それは「ダンディ」)。曲はバッハの「ブランデンブルク協奏曲」全曲、指揮者のジョン・バットのこれまでの趣味からだと、この曲集がブランデンブルク辺境伯に献呈される時よりも、もっと初期の段階の別バージョンを集めてあるのではないか、と想像したのですが、そんな期待はものの見事に裏切られました。彼らは、全く別のやり方で「ほかの人とは一味違う」ことをやっていたのです。
彼らの今回のコンセプトは、最近の研究成果を盛り込んで、この曲集が編まれた場所であるケーテンでのバッハの楽団を再現することでした。それはまず、各パートは一人ずつで演奏すること、そして、ピッチを低くすることです。
様々な証拠、例えばこの時期に作られたカンタータのアリアでの歌手の記譜上の音が異様に高い、などということから、当時のケーテンでのピッチは、後にバッハが赴任するライプツィヒなど、ドイツの他の都市でのものよりも、低かったというのですね。「カンマートーン」と呼ばれる当時の標準ピッチはA=415Hzで、現代のピッチより半音ほど低いものですが、ケーテンではさらに半音低いA=392Hzが採用されていたというのです。したがって、この録音ではそのピッチを採用、ここからは、モダン・ピッチに比べて全音低い音が聴こえてくるはずです。さらに、「音律」も、もちろん平均律ではなく、バッハが使ったと言われている「ヴェルクマイスターIII 」が使われています。
ピッチに関しては、彼らはもう一つの挑戦を行っています。当時は教会の中だけでは、備え付けのオルガンに合わせた少し高めの「コーアトーン」というピッチが採用されていました。それはA=465Hzという、モダン・ピッチよりも半音高く、「カンマートーン」からは全音も高いピッチでした。ヴィオールなどの楽器は教会で用いられることが多く、このピッチが用いられたということで、「第6番」で使われているヴィオラ・ダ・ガンバとヴィオローネはこの「コーアトーン」でチューニングされています。これは、ほかの楽器より短3度高いピッチですから、移調して演奏することになるのですが、そうすることによって豊かな響きが出てくるのだそうです。
ちなみに、1オクターブ間の周波数は2倍ですから、その間を12等分した平均律の半音の周波数は、2の12乗根(≒1.0595)倍になります。ですから、A=440Hzの場合は、半音下は415.3Hz、全音下は392.0Hzになります。
そんな、「ロー・ピッチ」で演奏された「ブランデン」は、なかなか味のあるものでした。そもそもバットは、ヘンな楽譜を使っていても演奏自体はマトモですから、表現上での奇抜なところは見られません。そこに、この落ち着いたピッチですから、とても重量感のある、地に足の着いた音楽を味わうことが出来ます。「5番」でチェンバロ・ソロを担当しているのはバット自身、これが、そんな「重量感」をもろに全面に出した、ちょっと凄味が感じられるものでした。普通のピッチだと「チェンバロがかわいそう」と思えてしまうほどの乱暴な演奏に出会うこともあるのですが、ここではそんなことは全くありません。楽器に無理をかけなくても、充分に超絶技巧が伝わってくる、という渋いものです。
同じように、「楽に吹いているな」と思えるのが「2番」のトランペットです。半音低いだけでこんなにも違うのか、と思えるほどの、いたずらに「難しさ」を強調しない素敵な演奏です。第3楽章のあっさりとした終わり方などは、とてもチャーミングでしたよ。ただ、「6番」のヴィオールの調律については、違いは全く分かりませんでした。

SACD Artwork © Linn Records
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by jurassic_oyaji | 2013-09-18 20:12 | オーケストラ | Comments(0)