おやぢの部屋2
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SCHUBERT/Octet
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Markus Krusche(Cl), Daniel Mohrmann(Fg)
Christoph Eß(Hr), Alexandra Hengstebeck(Cb)
Amaryllis Quartett
GENUIN/GEN 13269




2011年にこのレーベルから「White」というアルバムでデビューしたアマリリス・クァルテットは、その年にはメルボルンの国際室内楽コンクールで優勝し、翌年には日本でもコンサートを開くなど、最近とみに人気が出てきている、とても若いアンサンブルです。ヴァイオリンのグスタフ・フリーリングハウスとレナ・ヴィルト、ヴィオラのレナ・エッケルスはドイツ出身、チェロのイヴ・サンドゥはスイス出身です。そのファースト・アルバムはハイドンとウェーベルンという斬新なカップリングでしたが、2013年には「Red」というタイトルの、今度はベートーヴェンとベルクという組み合わせのセカンド・アルバムをリリースしました。
その2枚のアルバムの間、2011年の暮れに録音されたのが、このシューベルトです。八重奏曲ですから、管楽器が3人と、コントラバス1人の同じ世代のゲストが参加しています。
このクァルテットを聴くのはこれが初めてです。このCDで彼らだけのパートを聴いていると、正直、それほど個性的な団体とは思えないような、ちょっとおとなしい印象がありました。しかし、そこにかなりの曲者である他のメンバーが加わることによって、なんともものすごい「化学反応」が起こっています。
中でもその鋭利な音楽性でアンサンブルをリードしているのが、クラリネットのクルシェでしょう。彼は、とてつもないピアニシモを駆使することで、このサロン音楽から優雅さのようなものを一切そぎ取り、息苦しくなるほどの緊張感を与えています。それが端的に見てとれるのが第2楽章のAdagioです。終始テーマを与えられている彼のクラリネットが主導権を握っているこの楽章では、他の誰も「のびのびと歌う」などということは許されません。「音楽は、楽しむもの」と考えている人にとっては、もしかしたらそれは耐えがたい体験なのかもしれませんが、いつの時代の音楽でもそこから何かしらのメッセージを受け止めたいと思っている人にとって、これほど魅力的な演奏はありません。
それに対して、ファゴットのモーアマンの場合はもう少し楽天的、ちょっととぼけた音色も手伝って、クラリネットとは全く逆のベクトルで音楽に彩りを与えています。そんな二人が一緒にハモる時には、たがいに寄り添って見事に溶けあうのですから、素敵です。そこへ行くと、ホルンのエスは、孤高の道を行くという不思議なスタンスでアンサンブルに参加しているように見えます。その結果、ほとんどサプライズのような形で、音楽に巧みにアクセントが付けられていることを感じるはずです。ほんと、彼のパートがこんなことをやっていたことに気づかされる瞬間が何度あったことでしょう。
最後の楽章の序奏では、そんな8人のエネルギーが集積した、ものすごいダイナミック・レンジが披露されています。そこには、殆ど「シンフォニー」と呼んでもかまわないほどの壮大な風景が広がっています。それを受けて、例のちょっと「字アマリリス」の感のあるテーマが、エネルギッシュなフレージングで雄々しく歌われると、そこからは「ウィーンの情緒」などというものはすっかり消え去ります。これはそういう音楽だったのですね。シューベルトの晩年に作られたこの作品は、いかにもウィーン情緒たっぷりという印象が植えつけられていたものですが、それはムローヴァたちの演奏によって、大きくイメージが変えられてしまいました。そして、今回のCDでは、この曲の更なる可能性を知ることが出来るのですから、面白いものです。おそらく、子供のころに聴いた「名曲」などというものは、最新の演奏で聴きなおしてみると全く別の曲のように聴こえてしまうのかもしれませんね。それは、もしかしたらちょっと「不幸」な体験なのかもしれません。しかし、その先には確かな充足感が待っているはずです。

CD Artwork © GENUIN classics GbR
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by jurassic_oyaji | 2013-09-24 20:13 | 室内楽 | Comments(0)