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レナード・バーンスタイン/ザ・ラスト・ロング・インタビュー
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ジョナサン・コット著
山田治生訳
アルファベータ刊
ISBN978-4-87198-580-2



「このバンド無くしては日本という国がおっ勃(た)ちません」というフレーズは、先日行われたサザンオールスターズのスタジアム・ライブのオープニングMCに登場したものです。ご丁寧に、その「字幕」は巨大なLEDスクリーンに映し出されましたし、ファイナルではそれをWOWOWが生中継していましたから、その「勃」という、ほとんど「erection」の翻訳語として知られる二字熟語にしか使われることのない漢字(ま、「勃発」なんてのもありますが)は、ほぼ全国民の目に触れることになったのです。
まあこの程度のことはこの世界にはつきものですから別に目くじらを立てるほどのものではありません。しかし、その同じ二字熟語が、前世紀に多くの人に多大な影響を与えた指揮者であり作曲家、あるいは教育者でもあったレナード・バーンスタインの口から放たれ、それがそのまま活字となっているのを見てしまうと、ちょっと穏やかな気分ではいられなくなってしまいます。
この「巨人」が亡くなる1年前、198911月に、「ローリング・ストーン」誌のライターであったジョナサン・コットという人が、バーンスタインとのインタビュー原稿を依頼されたそうです。もはやそのようなメディアとの接触を断っていたマエストロを説得し、なんと12時間にも及ぶインタビューを敢行、その成果が、2013年にOxford University Pressから出版されたばかりの「Dinner with Lenny, The Last Long Interview with Leonard Bernstein」というタイトルの原書です。20年以上も前の記事がなぜ今頃書籍になったのか(そもそも、記事自体は掲載されたのか)とか、原書に数多く掲載されていた貴重な写真はなぜ割愛されたのか、などといった多くの疑問には、通常は「訳者あとがき」というものの中で答えられているものなのですが、その期待は巻頭にある「訳者は『訳者あとがき』を書きたいと準備していたが、著者の意向で掲載できなかった」という一文によって、叶えられることはありませんでした。「訳者」の無念さがにじみ出ているこのコメントは、もしかしたらこの本の中で最も印象的な文章なのかもしれません。この「著者」は、いったい何様のつもりなのでしょう。
確かに「著者」は、このインタビューの中では、かなり機知にとんだやり取りを披露しています。その一つが、さっきの二字熟語ネタです。
バーンスタイン:10歳のときに、僕は初めてピアノの鍵盤に触れた……僕が○起できるようになる前のことだ。
コット:幼児だって○起すると思いますが。
バーンスタイン:そうだけど、僕が言いたいのは”必要”な時に○起できるということだよ〈笑〉

まあ、「大人は必要な時に○起できる」ということなのでしょうね。大人であっても「必要な時に○起できない」人や、「必要でない時に○起してしまう」人は多いはずですが、このやり取りは、バーンスタインはそれをきちんとコントロールできる極めて稀な才能を持った人であること伝えるエピソードとして、後世に残ることでしょう。同じような「下ネタ」で、アルマ・マーラーに「ベッドに連れて行かれそうになった」というようなアレマな隠れた史実を引き出した才能も、なかなかのものです。
ただ、「カラヤンの死の床に立ち会った」とするバーンスタインの言葉に対して付けられた「カラヤンが死の直前に大賀典雄と面会していたことは有名な話であるが」という「訳者」の注釈には、なにか「ざまあみろ」といったような感情が込められているような気は、しないでしょうか。
そんなことを言ったら、インタビュー前の「プレリュード」という章で、バーンスタインが薬局で薬剤師から「覚醒剤」を渡されたという記述も、ひょっとしたら訳者が巧んだ意識的な誤訳なのかもしれませんね。
いや、バーンスタインはまともなことも喋っているんですよ。それは、実際に読んでいただく他はありません。

Book Artwork © alpha-beta publishing
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by jurassic_oyaji | 2013-09-26 23:07 | 書籍 | Comments(0)