おやぢの部屋2
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The Verdi Album
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Jonas Kaufmann(Ten)
Pier Giorgio Morandi/
Orchestra dell'Opera di Parma
SONY/88765492002




今まではDECCAというか、UNIVERSALの専属アーティストだったカウフマンは、SONYに「移籍」したようですね。シュリーマンではありません(それは「遺跡」)。せっかく、今まではかつてのDECCAの血を引くエンジニアによる素晴らしい音を楽しめたというのに、レーベルが変わってしまったら音まで変わってしまうのかもしれないと、ちょっと不安になりました。ところが、クレジットを見てみるとエンジニアのフィリップ・サイニーだけではなく、エグゼキュティブ・プロデューサーやレコーディング・プロデューサーまで、DECCA時代とほとんど同じ人が名を連ねているではありませんか。そういうことだったのですね。レーベル、つまりレコード会社が自前の録音スタッフを抱えて独自のサウンドを聴かせていたという時代は、とっくの昔に終わっていたのですよ。今ではそのような「現場」の仕事は外部のスタッフに任せて、レーベルは単にそれを販売する「権利」を有するだけという、文字通り「レーベル=ラベル」という意味しかなくなっているのですね。あ、これはあくまでUNIVERSALとかSONYといった「メジャー・レーベル」での話ですが。
というわけで、もちろん「ヴェルディ・イヤー」がらみでリリースされた(「Verdi200」というロゴが見えますね)カウフマンのニューアルバムでは、2008年にDECCAからリリースされたアルバムの中で歌われていたヴェルディのナンバーとは、同じオペラでもしっかり別の曲が収録されているという、理にかなった心配りがなされていました。
今回取り上げられているオペラは11作、その中には前のアルバムでは歌われていた「ラ・トラヴィアータ」は含まれていませんから、カウフマンのCDでのレパートリーはヴェルディのオペラ全26作中12作ということになります。モーツァルトやワーグナーで彼の歌に接していた人は、この数字に少し驚いてしまうことでしょう。あのカウフマンが、いつの間にかイタリア・オペラのスターにもなっていたのですからね。「ルイーザ・ミラー」や「群盗」といった、かなりコアな作品までクリアしてますし。
そこでまず、「名刺代わり」といった感じで始まるのが、ヴェルディのテノールのナンバーでは一番有名な「リゴレット」からのマントヴァ侯爵のカンツォーネ「La donna è mobile」です。これが、全然ヴェルディらしくありません。正確には、この時期のヴェルディらしくありません。「ズンチャッチャ」というノーテンキなリズムに乗って歌われる陽気な歌は、パヴァロッティあたりのとびきり明るい声にこそ映えるもので、カウフマンのくそまじめなキャラとは相容れないものです。
続く、こちらも定番、「アイーダ」からのラダメスのロマンツァ「Celeste Aida」などでも、イタリアオペラのファンにとっては最後のハイB♭では思い切り張った声で大見得を切ってほしいところでしょうが、それは聴衆に対するサービスではあっても、必ずしも作品の求めるものではないと考えているカウフマンは、その音をsotto voceで終わらせています。
カウフマンは、この中で「ヴェルディらしさ」を表現するために、ちょっとしたテクニックを使っています。それは、ピッチをほんの少し高めにとると同時に、要所に「泣き」を入れることです。ワーグナーなどでは決して使うことのないこの「小技」、しかしそれは、何かよそよそしさが感じられるものです。仕方なく相手に合わせた、という感じでしょうか。
ですから、彼がそのままの姿で妥協をせずに歌えるのは、後期の「オテッロ」あたりなのでしょう。ヴェルディが初めてそれまでの「番号オペラ」からの決別を成し遂げた、真にドラマティックなこの作品の中でこそ、カウフマンは彼自身のドラマを演じることが出来たのではないでしょうか。
相変わらず期待を裏切らない素晴らしい録音ですが、時折オーケストラが無神経な演奏をしているのが鼻に付きます。日頃オペラの伴奏をしているオケのはずなのに。

CD Artwork © Sony Music Entertainment
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by jurassic_oyaji | 2013-09-28 20:57 | オペラ | Comments(0)