おやぢの部屋2
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BRITTEN/War Requiem
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Emily Magee(Sop)
Mark Padmore(Ten), Christian Gerhaher(Bar)
Maris Jansons/
Tölzer Knabenchor
Chor und Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
BR/900120




「戦争レクイエム」がこんなに人気のある曲だったなんて、今の今まで気づきませんでした。いくらブリテンの生誕100年とか、作品の初演50周年とかが重なったとは言っても、このところの新譜ラッシュは、いったい何なのでしょう。今回はヤンソンス盤ですが、手元にはあとマクリーシュ盤とパッパーノ盤が控えています。それらがすべて今年録音されたものだというのですから、ちょっとすごいですね。
そんな「ブレイク」、ではなくて「乱立」の中で、何とか自社製品をアピールしようと、それぞれのレーベルを抱える代理店は知恵を絞っているのでしょう。このレーベルの代理店、ナクソス・ジャパンでは、本家NAXOSだけで手いっぱいなのでしょうに、しっかりとフルサイズの「帯」を付けてくれましたよ。それが、これです。
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「スコアの冒頭」に書いてあるというオーウェンの詩の原文が載っているのが、まずすごいですね。そして、それをきちんと日本語に訳してくれています。そんなことは、担当者の語学力をもってすればいとも容易なことなのでしょう。ところが、3行目の「All a poet can do today is warn.」を「すべての詩人が今日成し得ることは警告を与えることである」と訳したのは、「All」の意味を取り違えてしまった明らかな誤訳です。ここでの「All」は、「poet」にかかる形容詞ではなく、「すべてのもの」という意味の名詞です。直訳すれば「ひとりの詩人(オーウェン自身のことでしょうね)が今日出来ることのすべては、警告を発することだ」となるのでしょうが、文章としては「詩人である私には、今は警告することしか出来はしない」ぐらいの方が、読んで美しいと思えるのではないでしょうか。もう1ヵ所「普及の名作」というのも、まあこれだけこの曲が世の中に広まっている、という意味を込めたのでしょうが、やはり「不朽の名作」のほうがきちんと意味が伝わります。こんな間違いを犯さないように不眠不休で勉強してください。
そんな感じで、完全に足を引っ張ってしまった形の「帯」です。これでは、わざわざ「帯」を付けた意味がありませんね。
そんなことにめげてはいけません。真摯に演奏そのものを聴かなければ。これは今年の3月13日から15日にかけてミュンヘンのガスタイクという有名なホールで行われたコンサートのライブ録音ですが、ブックレットの中の写真はこのホールとは違っています。実は、同じメンバーは3月23日にルツェルン音楽祭でもこの曲を演奏していたのですね。写真はその時のものでした。それを見ると、合唱が100人ちょっとと、この曲に対しては少なめ、しかも作曲家の指示ではソプラノ・ソロはその合唱の中で歌うはずなのに、ここでは指揮者のすぐ横にいます。これは、この曲でのソプラノ・ソロの役割には明らかに背いた措置なのではないでしょうか。あるいは、ソリストが作曲家自身のDECCAでの録音セッションの時のように「前で歌わせろ」とごねた結果なのでしょうか。
そんな少人数の合唱にも表れているように、ヤンソンスのこの曲に対する姿勢は、何か醒めたもののように感じられてしまいます。「Requiem aeternam」では、大人数の合唱であればそこから生まれるピアニシモから伝わってくるはずの不気味な雰囲気が、この人数ではなかなか生まれてきません。「Dies irae」での金管楽器も、なんか遠慮がちのよそよそしさ、思いっきり弾けてやろうという気概がほとんど感じられません。ソリストにしても、「Offertorium」に続く「So Abram rose」でのハープのイントロに乗って美しく歌われるはずの「an angel called him out of heav'n」というテノールとバリトンの二重唱は、二人の思いがバラバラで全く美しくありません。そもそも、パドモアもゲルハーエルも、この曲を歌うには、あまりにも繊細すぎるのでは、という気がしてしまいます。ソプラノのマギーも、「Sanctus」の冒頭など、決定的にパワー不足の感は否めません。

CD Artwork © BRmedia Service GmbH
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by jurassic_oyaji | 2013-10-04 20:31 | 合唱 | Comments(2)
Commented by ななしのごんべい at 2013-10-06 22:06 x
「すべての詩人が今日成し得ることは警告を与えることである」
そんなに難しい英語でもないのに、これはちょっと酷い訳ですね。

「普及の名作」
これもちょっと。

ナクソスに限らず、どうして CD (LP)の帯や解説は昔からいい加減なんでしょうね。
Commented by jurassic_oyaji at 2013-10-06 22:24
そもそも、何十年も前に書かれた原稿をそのまま使い回しているのが大レーベルですからね。まあ、NAXOSの場合はきちんと新たに書いているだけマシですが、担当者のスキルがお粗末すぎますね。