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DECCA SOUND/The Analogue Years
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V.A.
DECCA/478 5437




2年前に出たThe Decca Soundの続編です。同じように50枚のCDが入ったボックスですが、今回は2枚組になっているオペラの全曲盤などもありますから、実質は54枚入りです。いや、そんな枚数には関係なく、それぞれのCDにはたっぷりボーナス・トラックが加わっていますので、本当は何枚分なのか、見当もつきません。もちろんここで言う「枚」というのはオリジナルのLPの枚数のことです。LP1枚にはどう頑張っても60分ぐらいしか入りませんが、CDだったら80分以上入りますから、「おまけ」を入れるには事欠きません。
今回は特に「The Analogue Years」というサブタイトルが付いている通り、前回は含まれていたデジタル録音のものは一切ありません。つまり、全てアナログ録音によるもので、1点を除いてはかつてはLPでリリースされたものばかりが集められています。そして、なんとこの中には、1枚だけ「モノラル」のLPで出たものも有るのです。政治家に欠けているものではありません(それは「モラル」)。
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このボックスでは最近のものからほぼ年代順に番号が付けられています。その最後、50枚目には、DECCA1954年5月にアンセルメとスイス・ロマンド管弦楽団によって初めてステレオ録音を行った、リムスキー・コルサコフの「アンタール」と、グラズノフノ「ステンカ・ラージン」が入っています。もちろん、これはロイ・ウォレスという、DECCAがステレオ録音を行うにあたってヘッドハンティングしたエンジニアによってステレオで録音されてはいますが、同時に、ギル・ウェントという別のエンジニアによってモノラルのテープも作られていました。というのも、ステレオのLPが、しっかり規格も決まって世界中で発売されるのは1958年になってからのことですから、この録音の時点ではステレオのLPは存在しておらず、商品としてはモノラルのLPでしか出すことはできなかったのですね。事実、このジャケットのモノラルLPはその年の10月にリリースされましたが、ステレオ版はこのカップリングで出ることはなく、「アンタール」にいたってはLPで発売されることすらありませんでした。そのステレオ音源は、録音されてから半世紀近くも経った2002年に「Decca Legends」シリーズのCDとして、「シェエラザード(1960年録音)」とのカップリングで初めて日の目を見たのです。このステレオ版「アンタール」が、先ほどの唯一LPでリリースされなかったものになります。そして、モノラル版はこれが初めてのCD化となります。
この2枚のCDを比較できるというのが、今回最も惹かれるものでした。ここでウォレスがとったマイクアレンジは、その後のDECCAの録音のベースとなる、3本のマイクを三角形の頂点に配した「デッカ・ツリー」と呼ばれるものでした。モノラル版では、おそらく別のマイクを使っていたのでしょう、それは、単に「音が左右から聴こえてくる」といった次元のものではなく、楽器の分離とか、それぞれの存在感などが全く違っていました。例えば、ハープの音などは、モノラルでは他の楽器に埋もれてしまっているものが、ステレオでははっきりと浮き上がって聴こえてきます。ちなみに、ここでアンセルメが使っているのは「第2稿」の楽譜です。
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この「アナログ・イヤーズ」の時期の最大のヒット・メーカーと言えば、やはりジョン・カルショーでしょう。ここには、そのカルショーがDECCAで最後に手掛けた196710月の録音、ヴェルディの「レクイエム」も収録されています。もちろん、エンジニアはゴードン・パリー、サザーランド、ホーン、パヴァロッティ、タルヴェラという重量級の歌手の選定からして最高の布陣で迫ります。「Dies irae」のバスドラムの音を聴くにつけ、かつてはこのように絶対に「生」では表現できない「レコード芸術」の究極の姿があったことに、思いを馳せる人は多いはずです。言うまでもありませんが、ただのCDではその片鱗しか味わうことはできません。

CD Artwork © Decca Music Group Limited
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by jurassic_oyaji | 2013-10-08 22:56 | オーケストラ | Comments(0)