おやぢの部屋2
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STRAVINSKY/The Rite of Spring, STOKOWSKI/Bach Transcriptions
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Yannick Nézet-Séguin/
The Philadelphia Orchestra
DG/00289 479 1074




フィラデルフィア管弦楽団がメジャー・レーベルからCDを出すなんて、一体何十年ぶりのことなのでしょう。かつてオーマンディ時代にはCOLUMBIAとRCAというアメリカの二大レーベル、そのあとのムーティの時代(1980年代)にはEMIと専属契約を結んでいて、おびただしい数のLPCDを出していました。しかし、その後メジャー・レーベルはコストのかかるオーケストラの録音からは手を引くようになっていきます。次の次の音楽監督のエッシェンバッハの時(2000年代初頭)には、なんとONDINEというフィンランドのマイナー・レーベルからワンポイントでSACDを出しました。これはコンサートをそのままライブ録音したものでしたが、なかなか聴きどころの多いものが揃っていたような気がします。しかしそれも、エッシェンバッハがこのオーケストラを追い出されてしまうと、もはやリリースされることはなくなってしまいます。大切な収入源を失ってしまったのですね。
しかし、CDこそ出してはいませんでしたが、このオーケストラは他に先駆けてライブ音源のネット配信という新しい商法を確立していました。ある意味、時代の先を行っていたのでしょうが、やはりCDを出さないことには今までの「栄光」を維持することは出来ないのでは、とは、だれしもが感じていたことでしょう。
そうこうするうちに、このオーケストラの経営はどんどんヤバくなってしまい、とうとう「倒産」してしまいます。しかし、各方面の懸命の努力で、奇跡的な「再建」を果たすのですね。そして、まるでその象徴でもあるかのように、2012年に音楽監督に就任したネゼ=セガンのもとで、DGからCDを出すことになったのです。しかも、そのCDはこのところの潮流であるコスト削減のためにあり合わせのコンサートをそのまま録音するという「ライブ録音」ではなく、わざわざ録音のために予定を設けて指揮者や楽団員を集め、お客さんのいないところで録音するという「スタジオ録音」によって作られています。もはや録音の現場、特にメジャー・レーベルでは完全に死に絶えたと思っていたこの贅沢な録音方式が、まだ残っていたことに、深く感動しているところです。
そんな丁寧なセッションですから、どんなスタッフが担当しているのかも気になりますが、ここでレコーディング・エンジニアとしてクレジットされているのはチャールズ・ギャグノンという人でした。この名前は、ONDINESACDでも見られていたもので、おそらくこのオーケストラの専門の録音スタッフで、配信音源などの録音も担当しているのではないでしょうか。「スタジオ録音」とは言っても、録音会場は彼らのホームグラウンドであるヴェライゾン・ホールですから、彼らの音もホールの特性も完全に把握している人材ということなのでしょう。
曲目は、まずストラヴィンスキーの「春の祭典」。なんたって今年は「初演100周年」ですから、いささか食傷気味という気もしますが、この曲はこのオーケストラによって「アメリカ初演」が行われているのですから、そんな「栄光」を語るには最適のチョイスです。しかも、ここでのネゼ=セガンは、逆に「過去の栄光」を振りはらうかのようにその「初演」を行ったレオポルド・ストコフスキーとは全く異なる、いささかも感情におぼれることのないクールなアプローチを試みています。各パートの音がすっきりと届いてくる見晴らしの良さからは、この作品の新たな魅力が確実に感じられます。
そして、カップリングが、そのストコフスキーによるバッハの有名なオルガン曲の編曲です。こちらも、「トッカータとフーガニ短調」などを聴くにつけ、たとえば「ファンタジア」などでのストコフスキー自身の演奏とはまるで違った、醒めた視線を感じることが出来るのではないでしょうか。その引き締まった弦楽器の響きからは、まさに「今」の時代に耐えうるだけの「栄光」を目指してこのオーケストラを曳航しようとしている指揮者の意志さえも感じられるはずです。

CD Artwork © Deutsche Grammophon GmbH
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by jurassic_oyaji | 2013-10-12 21:03 | オーケストラ | Comments(2)
Commented by とおりすがり at 2013-10-13 07:42 x
トッカータとフーガニ単調
いつも誤植にうるさい主さんですが、そういう方でも
こういう間違いをするのですね。
Commented by jurassic_oyaji at 2013-10-13 21:18
お恥ずかしい。いや、結構変換ミスは多いので、見つかる前に直しています。