おやぢの部屋2
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WAGNER/The Colón Ring
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Jukka Rasilainen(Wotan)
Linda Watson(Brünhilde)
Stig Andersen(Siegmund)
Daniel Sumegi(Fasolt, Hunding, Hagen)
Valentina Carrrasco(Dir)
Roberto Paternostro/
Teatto Colón Orchestra and Chorus
C MAJOR/713104(BD)




201111月に、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスにあるオペラハウス「テアトロ・コロン」で上演された、ワーグナーの「リング」の映像です。これは、普通に演奏すれば4日間、正味14時間かかる作品を、たったの6時間15分に縮めて一晩で上演したというものなのです。「そんなものは『リング』ではない」というワグネリアンの声が聞こえてきそうですが、そもそもこのアイディアは、ワーグナー教の総本山、バイロイト音楽祭の総帥カタリーナ・ワーグナーが提案したものなのです。
実際のところ、この作品はあまりに長すぎるというのは、作曲者自身も分かっていたのでしょう。初めて聴く人にとっては4日目にもなってくると、1日目にどんなことがあったのか、普通は憶えていないはずでしょうから、ワーグナーはそういう人のために、物語の中で「前回までのあらすじ」をやっているのですよ。例えば、「神々の黄昏」序幕の3人のノルンのシーンなどは、まさにそんな部分、一回で上演するのだったらこんなものは全く必要ありません。
実際にこの「短縮」作業を行ったのはコルト・ガルベンという人です。そこでは、ガルベン自身が冗長だと感じた部分も容赦なくカットされ、めでたく半分以下にカットされた「短縮版」が出来上がりました。さらに、ダニエル・スメギが一人で3役を演じているように、キャストの使い回しも可能になり、大幅な経費節減も。
その結果、神々族の中でもどうでもいいキャスト、ドンナーやフローの出番は丸ごとなくなっています。もちろんノルンたちも。ただ、エルダまでカットしたのは、ちょっと問題。そんな風に「ちょっとそれはないだろう」というところもたくさんありますが、それでも極力流れを損なわず、ストーリーの勘所は押さえていたのではないでしょうか。
そんなことよりも、ヴァレンティーナ・カラスコの演出には、先日亡くなったパトリス・シェローが30年以上前にバイロイトで行ったこの作品の「読み替え」に匹敵するほどの衝撃を受けました。彼女が設定した舞台は1970年代の軍事政権下の「アルゼンチン」、その暗黒時代に横行していた幼児誘拐事件を盛り込んで、この作品の最大のモチーフである「黄金」を、「こども」に置き換えたのですね。アルベリヒがラインの乙女(というか、ここでは「おばさん」)から奪ったものは生まれて間もない赤ん坊、ニーベルハイムで行われていることは、幼児の誘拐と母親の拷問という設定です。当然、巨人族が略奪したのは小さな子どもたち、彼らはファフナーの洞窟のそばの檻に入れられています(これが、みんなすごくかわいいんですよね)。そして、大詰めでは、その子たちはみんな両親のもとに帰ってくるのです。時系列はデタラメですが、これは感動ものですよ。
実は、この演出家はカタリーナがキャンセルしたために急遽呼ばれた人、そんなゴタゴタ(短縮版のパート譜は手作業で作成、それが間違いだらけだったので、指揮者が怒って帰ってしまうシーンとか)をつぶさに記録したメイキング映像のほうが、もしかしたらもっと感動を呼ぶかもしれません。ジークムント役の歌手が病気で出演出来なくなったので、もしかしたら自分が出られるのではないかと思った控え(シャドー、ですね)の歌手が、結局別の代役(この人、ハナ肇そっくり)が来ることになって願いはかなわなかったというような「悲哀」あふれる裏話も満載です。
ちなみに、ヴォータンとフリッカは、ちょっと時代が違いますが、ペロン大統領とエヴィータがモデルになっています。これはすぐに分かったのですが、このメイキングでそのことがしっかり確認できました。ということは、このヴォータンを「ビデラ将軍」としたレビューを音楽雑誌に執筆した「音楽学者」は、せっかくのこのメイキング映像を見ていなかったのでしょうね。これは恥かしいミステイク

BD Artwork © C Major Entertainment GmbH
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by jurassic_oyaji | 2013-10-14 22:18 | オペラ | Comments(0)