おやぢの部屋2
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KOECHLIN/Chamber Music with Flute




Tatjana Ruhland(Fl)
Yaara Tal(Pf)
HÄNSSLER/CD 93.157



このレーベルではおなじみ、シュトゥットガルト放送交響楽団で、木管の「顔」として首席フルート奏者を努めているタティアナ・ルーランドが中心になったアルバム、ケックランの様々な楽器とのアンサンブル曲を演奏しています。その相方、クラリネット、ファゴット、ホルン奏者などは、もちろんこのオーケストラのメンバーです。
パリ音楽院でマスネとフォーレに学んだシャルル・ケックランは、しかし、そのようなフランスの流れにはとどまらない、広範な作曲技法を模索することになります。ある人に言わせれば、まるであのストラヴィンスキーのように、作風のバリエーションは豊富だとか。彼の手法はグレゴリオ聖歌や教会旋法から、12音技法にまでおよんだということです。テレビ番組も作りましたし(それは「カックラキン」)。
ここで聴かれる小さな曲たちの中にも、そんな技法の片鱗は窺えます。師フォーレの作品などでもおなじみの、実際にフルートを学ぶ学生のための初見課題として作られたほんの2分足らずの「小品」なども、いかにも流れるような情緒たっぷりのメロディーが最後まで続くかと思わせて、最後にいきなり突拍子もないパッセージが現れるのですから、それこそ「初見」で演奏した学生は面食らったことでしょうね。「2本のフルートのためのソナタ」なども、明らかに12音技法が使われている曲です。ただ、それだけに終わらない、魅力的な一面をきちんと保っているのは、見事です。「フルート・クラリネット・ファゴットのためのトリオ」では、最後の楽章に現れるのは、まるでドイツ・ロマン派のようなテーマ、しかもそれが「フーガ」という古典的な手法で展開されるのですから、驚かされます。
楽器の組み合わせにも、ケックランのユニークさは現れています。フルート、ホルン、ピアノという、ちょっとミスマッチっぽい編成の「2つのノクターン」は、予想に反してホルンとフルートが見事に溶け合った素敵なサウンドを聴くことが出来ます。ただ、中には本当のミスマッチも。映画好きのケックランが、1937年に亡くなった美人女優ジーン・ハーローを偲んで作ったという「ジーン・ハーローの墓碑銘」という曲では、フルートにアルト・サックスとピアノという組み合わせを取っているのですが、これを聴くと、この新参者の楽器がいかにフルートと似つかわしくないか、いや、もっと言えば、この暴力的で無神経な音はそもそもクラシック音楽とはなじまないものなのだということが如実に分かってしまいます。
神戸の国際フルートコンクールでも入賞(上位入賞ではありませんが)したというルーランドは、先日ご紹介したハンガリーのフルーティストとは比べようもない、洗練された演奏を聴かせてくれています。特に、高音の抜けるような響きはとことん魅力的、いまいち内向的なケックランの音楽に、確かな華やかさを与えてくれています。もう一人、同じオーケストラから参加しているフルーティスト、クリスティーナ・ジンガーと一緒に演奏している曲では、明らかに存在感に違いがあるのが分かります。ただ、このような輝かしい音は、現在のシェフ、ノリントンがこのオーケストラから引き出そうとしているある種禁欲的な音色とは、若干相容れないものであるのは明らかです。そのあたりを、この首席奏者はどのように折り合いを付けているのか、あるいは密かに火花を散らしあっているのか、もうしばらく様子を見ていたいものです。
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by jurassic_oyaji | 2005-06-19 19:15 | フルート | Comments(0)