おやぢの部屋2
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GOUNOD/The Complete Works for Pedal Piano & Orchestra
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Roberto Prosseda(Ped.Pf)
Howard Shelley/
Orchestra della Svizzera Italiana
HYPERION/CDA67975




「ペダル・ピアノ」と言えば、以前にもこちらで、そんな楽器のために作られた作品のCDを聴いていました。あの時は、それらの作品が作られた時代に存在していた「本物」のペダル・ピアノを使って演奏されていましたね。その時の写真を見ると、普通のグランド・ピアノとはかなり違う形をしています。足元にオルガンと同じような足鍵盤(ペダル)があり、そこから操作される低音用のピアノ線が収納されているケースが、縦になって足元に設置されていました。もちろん、こんな楽器は19世紀の中ごろに現れて、すぐに消えてしまいますから、現在では同じ形の「新品」は存在してはいません。
HYPERIONレーベルの貴重なアンソロジー「The Romantic Piano Concerto」の最新アルバムで取り上げられていたのが、このペダル・ピアノを使ったグノーの作品でした。おそらく「アヴェ・マリア」やオペラの作曲家としての認識しかないシャルル・グノーは、こんなジャンルの作品も残していたのですね。もちろん、グノーもさっきのリンク先で登場する作曲家たちと同じ時代の人ですから、やはりあのエラールやプレイエルの楽器を使って演奏するためにそれらの曲を作ったのでしょうが、このアルバムでは、そのようなヒストリカルな楽器ではなく、「モダン楽器」としてのペダル・ピアノが用いられているという点が、まず注目されるのではないでしょうか。実際にロベルト・プロセダが演奏している楽器の写真が、これです。
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これは、スタインウェイのフル・コンサート・グランドの「D」タイプを2台、上下に並べた物です。下に置かれたスタインウェイは、脚を取り外してキャスターだけの状態、その上に、イタリアのオルガン製作者クラウディオ・ピンチが考案した「ペダル」がセットされています。そう、「ペダル・ピアノ」という名前から、ペダルの部分で演奏される音は本来のピアノよりも低い音であるかのように思いがちですが、ピアノはそれ自体でオルガンのペダルに相当する低音を出すことが出来るのですね。ですから、このピンチのペダル・システムでは、足鍵盤によって低い方の鍵盤を操作するだけのものなのです。ただ、鍵盤としてのペダルの数は37しかありません。これでは3オクターブしか出せませんが、実際には5オクターブ、低音寄りの61の鍵盤をこのペダルを使って操作することが出来るそうなのです。つまり、足鍵盤である「ペダル」のほかに、「ペダル」が3本付いていて、それでピアノの鍵盤にハンマーが当たる場所を1オクターブずつ移動させているのです。ですから、これはオルガンの「ペダル」というイメージではなく、連弾の時の第2奏者、みたいなものになるのでしょうね。
ここでの演奏を聴いてみても、そんな感じは伝わってきます。「ペダル」とは言っても要は同じピアノの低音部を弾いているだけなのですから、音色も全く一緒、特に1886年に作られた「協奏的組曲イ長調」の方は、独立してペダルのパートが聴こえてくることはほとんどありません。両手両足を使って一生懸命弾いていても、音を聴くだけではそれが報われない、ちょっと悲しい使われ方です。
しかし、1889年に作られた「ペダル・ピアノのための協奏曲変ホ長調」では、全然様子が変わって、ペダルのパートがきちんと別の声部に割り当てられて、ポリフォニックに扱われていますから、存分にその威力を聴きとることが出来ます。「ロシア国歌による幻想曲」では、テーマである、あの「1812年」にも登場するメロディが、絶対に両手だけでは弾けない豊かな低音を伴って披露されています。
グノーの曲自体は、まさにオペラのエッセンスが詰まった、カラッとした明るさ満載のキャッチーなものです。こんな楽しい曲で、ソリストが体全体で名人芸を披露してくれれば、パリのサロンはさぞや華やぐのーでしょうね。聴いていたマダムたちもうっとりだったことでしょう。

CD Artwork © Hyperion Records Limited
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by jurassic_oyaji | 2013-10-26 20:03 | ピアノ | Comments(0)