おやぢの部屋2
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TCHAIKOVSKY, ELLINGTON & STRAYHORN/Nutcracker Suites
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Steven Richman/
Harmonie Ensemble/New York
HARMONIA MUNDI/HMU 907493




以前、こちらでグローフェが作ったガーシュインのオリジナル・スコアを演奏していたスティーヴン・リッチマンという人は、そのようなジャズのオリジナル・スコアを発掘して現代に蘇えらせるという仕事に情熱を傾けているのでしょうね。今回は、なんとチャイコフスキーの「くるみ割り人形」を、デューク・エリントンのビッグ・バンドがジャズに編曲して1960年に録音したものを、実際のスコアを使って2010年に録音しています。さらに、同じ曲のチャイコフスキー・バージョン(というか、原曲)を、クラシックのオーケストラをリッチマンが指揮をして録音したものがカップリングされています。これは、同じ指揮者がクラシックとジャズの「くるみ割り人形」を同じアルバムに世界で初めて収録したものなのだそうです。確かに、そんなことをやる指揮者はなかなかいないでしょうね。
ジャズ版では、編曲者としてデューク・エリントンともう一人ビリー・ストレイホーンという名前がクレジットされています。このストレイホーンという人は、エリントン・バンドのテーマ曲である「Take the "A" Train」を作った人で、エリントンの「片腕」というか、ほとんど「影武者」としてバンドのために編曲などを行っていたそうです。
このジャズ版、チャイコフスキーの作品71aとして知られる8曲から成る組曲を、全てジャズに編曲したものです。なぜか全部で9曲になっているのは、オリジナルの「小さな序曲」を、「Overture」と「Entr'acte」として、全く異なる編曲プランで2度使っているからです。真ん中にこの「Entr'acte」を置くことで、組曲として収まりの良い形にしたのでしょう。さらに、「Overture」以外は、原曲とは異なる順番になっています。
タイトルも、ジャズっぽいちょっとひねったものに変わっています。2曲目の「Toot Toot Tootie Toot」は、例のフルート3本のソリで聴かせる「葦笛の踊り」ですが、いきなりクラリネットで冗談のような音列が登場して、驚かせてくれます。オリジナルのハーモニーを逆手にとって、軽妙に迫ります。2曲目の「Peanut Brittle Brigade」というのは、「小さな行進曲」のこと、引用しているのは前半だけで、後半の細かい音符が続くところは使われていません。まさに正調スウィングで、あの秋吉バンドのルー・タバキンのパワフルなテナー・ソロが聴けます。
3曲目の「Sugar Rum Cherry」は、想像通り「金平糖の踊り」でした。チェレスタ・ソロが、とても甘いサックスのアンサンブルで再現されています。フレーズの頭だけを執拗に繰り返すというエンディングがおしゃれ。
Entr'acte」を挟んで、6曲目の「The Volga Vouty」は、「トレパーク」ですね。忙しいロシアの踊りが、軽妙なスウィングに変わります。7曲目の「Chinoiserie」は、そのまんま「中国の踊り」、これは、意識的に中国風のコードを取り入れたかなり高度なアレンジが光ります。エンディングがとんでもない音で終わっているのも、そういう流れだったのでしょう。
そして、オリジナルでは最後を飾る「花のワルツ」が、ここでは「Dance of the Floreadores」となって8曲目に来ています。もちろん、3拍子の「ワルツ」ではなく、4拍子になっています。最後の9曲目は「Arabesque Cookie」で、もちろん原曲は「アラビアの踊り」です。「アラビア」というよりはちょっと悩ましい「ラテン」、あの「タブー」みたいなテイストで迫ります。途中で出てくるソプラノ・サックスとバス・クラリネットの不思議なポリコード感がたまりません。
と、単にクラシックをそのままアレンジしたのではない、とても手の込んだアレンジには脱帽です。ところが、一緒に入っている原曲が、寄せ集めのメンバーによるかなり少ない人数によるもので、聴いていてとてもつまらないもの、はっきり言ってジャズ版には到底及ばないレベルの低さでした。「花のワルツ」のハープのカデンツァが、後半でかなり手を加えられているのには、一体どういう意味があるのでしょう。

CD Artwork © harmonia mundi usa
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by jurassic_oyaji | 2013-10-30 20:35 | オーケストラ | Comments(0)