おやぢの部屋2
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GLASS, RUTTER, FRANÇAIX/Harpsichord Concertos
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Christopher D. Lewis(Cem)
John McMurtery(Fl)
Kevin Mallon/
West Side Chamber Orchestra
NAXOS/8.573146




確か草稿では「チェンバロ…ドイツ語、ハープシコード…英語、クラブサン…フランス語/どの言葉でも、どの時代でも、全て同じ楽器です」だったはずの帯コピーが、実際に製品に付けられたものはこんな風になっていました。
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もしかしたら、こんなブログで、「チェンバロがどの時代でも全く同じだったなんて、全くのデタラメ。特に20世紀の音楽では、その時代にしかなかった特別な楽器『モダンチェンバロ』のために作られた曲がいくらでもあった」と指摘されていたのを見て直したのかもしれませんね。でも、「ラター」というこの代理店の公式表記に逆らってまで、「ラッター」と表記してくれた点らったーら、褒めてあげてもいいかも。
ここで使われている楽器は、1994年に作られたフレンチ・スタイルのヒストリカルチェンバロのコピーです。本当は、フランセのようにモダンチェンバロしかなかった時代(1959年)に作られた曲では、ヒストリカルで演奏するのはちょっと問題があるのでしょうが、今では「モダンチェンバロ」という、言ってみれば「古楽器」はクセナキスのような特別な作曲家の作品以外ではまず使われることはなくなっているようです。もちろん、ラッター(1979年)やグラス(2002年)の作品の場合は、もはや「モダン」は姿を消していましたから、この楽器で演奏するのは当然のことです。
ラッターの作品のタイトルは「Suite Antique」、なんでも、バッハの「ブランデンブルク協奏曲」を演奏するコンサートのために委嘱されたそうで、バッハに対するオマージュを込めるという意味で、「バッハの時代のスタイル」で作ったものなのだそうです。その「スタイル」というのは、この曲集で用いられている複数の楽器のための協奏曲。そこで、ラッターはフルートとチェンバロをソロ楽器に選びました。ただ、チェンバロはほとんど「通奏低音」のような使われ方で、実質的にはフルート協奏曲といった感じです。しかし、彼がこだわった「バッハ」はそこまで、曲調はいつものラッターの親しみやすい「スタイル」で通されています。
確かに「組曲」という名の通り、気楽な小品が並んだ作品、最初の「前奏曲」は、いきなりフルートがラフマニノフっぽいメロディを奏でて、ラッターの世界へ引きずり込んでくれます。続く「オスティナート」は、とてもリズミカルな曲。3+3+2+2+2というヘミオレのリズムは、あのバーンスタインの名作「ウェストサイド・ストーリー」の中の「アメリカ」と全く同じノリの良い曲調ですから、とてもバッハにはついていけないでしょう。4曲目の「ワルツ」は、完璧なジャズ・ワルツ、フルートはしっかりアドリブ・ソロ(もちろん、記譜してあるのでしょうが)まで披露してくれますよ。ただ、そんなぶっ飛んだ曲の中にチェンバロが加わっているだけで、なぜか上品なたたずまいが生まれてくるのが不思議です。フルートのジョン・マクマーテリーも、節度のある演奏を貫いていますし。
グラスの場合は、きちんと急-緩-急の3つの楽章から成る「協奏曲」です。しかし、そのような対比はあるものの、楽章の中はまるで金太郎飴のように、どこを切っても殆ど同じ音楽だというのが、それこそチェンバロの優雅な響きとあいまって眠気を誘います。
フランセあたりだと、軽妙さの中にも真摯さが漂います。この3曲の中では最も豊かな音楽が感じられるのではないでしょうか。だからこそ、おそらく作曲家はもう少し芯のある音をチェンバロに求めていたのではないか、という思いも募ります。
ここで演奏している「ウェストサイド室内管弦楽団」というのは、10年ほど前に作られたアメリカの新しい団体で、このアルバムが最初のCDとなります。そこでライナーで「Naxosから最初の録音がリリース出来たのが誇りです」と述べているのですが、そんな時代になっていたんですね。知りませんでした。

CD Artwork © Naxos Rights US, Inc.
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by jurassic_oyaji | 2013-11-05 21:32 | 現代音楽 | Comments(0)