おやぢの部屋2
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BRITTEN/War Requiem
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S. Gritton(Sop), J. M. Ainsley(Ten), C. Maltman(Bar)
Paul McCreesh/
Wroclaw Philharmonic Choir, Gabrieli Young Singers Scheme
Trebles of the Choir of New College Oxford
Gabrieli Consort & Players
SIGNUM/SIGCD 340




「戦争レクイエム」のレビューは続きます。今回は、2013年の1月から3月にかけて録音されたマクリーシュ盤です。とは言っても、3か月間ずっと録音を続けていたわけではなく、メインは1月5日から9日までのワトフォード・コロシアムでのセッション、それ以外の2月のバーミンガム・タウン・ホールと、3月のセント・ミシェル&オール・エンジェルズ教会でのセッションは、オルガンを使う部分の録音だったのでしょう。
マクリーシュが、ポーランドの音楽祭「ヴラストラヴィア・カンタンス」とのコラボレーションで推進してきた、大編成のオラトリオの録音シリーズも、今回でベルリオーズの「レクイエム」、メンデルスゾーンの「エリア」に続いての第3弾となりました。しかし、今までのようにオーケストラを通常のサイズから拡大して演奏することはなく、ブリテンのスコアに忠実なほぼ「16型」の、ごく普通のオーケストラが使われています。もちろん、この曲ではそれ以外にももう一つのアンサンブルが加わりますから、少しは大人数にはなりますが、まあそれは前2作のような常軌を逸したものではありません。合唱にしても、200人まではいかない、この曲にとってはごく普通のサイズです。
録音も、ベルリオーズでの教会内でのライブというとても難しいものを経験してからというもの、しっかりと音楽的なものを作りたいと思ったのでしょう、メンデルスゾーンではライブ直後に別のところで丁寧にセッション録音を行っていました。そして今回は、実際の演奏自体は2008年に行われていたものを、その時のメンバーを再集結させて改めて「ブリテン・イヤー」に合わせての録音となりました。
そんな、周到な準備と、以前よりは「常識的」な編成ということで、おそらくエンジニアにとっても納得のいく仕事が出来たのでしょう、これはとても素晴らしい音に仕上がっています。マクリーシュの場合、DG時代から一貫してニール・ハッチンソンという人がバランス・エンジニアを務めてきているようですね。この人はかつてはDECCAのエンジニアでした。今回のセッションの写真を見てみると、しっかり、そのDECCAの伝統である「デッカ・ツリー」を使っていることが分かります。
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ということは、この曲が最初に作曲者の指揮によって録音された時と全く同じやり方で録音されている、ということですね。
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その時の写真がこれです。「ツリー」の3本のマイク(スリー)のほかに、その外側にさらに2本の「アウトリッガス」を付け加えたのは、その時のエンジニア、ケネス・ウィルキンソンでした。今回のマクリーシュのセッションでも、指揮者の頭上の「ツリー」の脇に、「アウトリッガス」のかたわれを見つけることが出来ますね。ブリテン自身のセッションは1963年の1月3日から10日まで、それから正確に半世紀後に、全く同じマイクアレンジで録音が行われたというのは、何かの因縁なのでしょうか。
そんな素晴らしい録音にも助けられて、今回の、特に合唱は、時として言葉を失うほどの美しさを聴かせてくれています。正直、今までDECCAの録音で合唱からインパクトを受けたという記憶は殆どなかったので、これは新鮮な驚きです。メンバーはおそらく若い人が多いのでしょう、特に女声の無垢な声は心に響きます。さらに、「Sanctus」のように、オーケストラのものすごい音響にも全く負けずにそのままで合唱が聴こえてくるのも驚異的です。この前のヤンソンスの時には、この部分で明らかにフェーダーで合唱のレベルを上げていましたからね。
これで、ソプラノ・ソロにもう少し力があったなら、間違いなく何度も繰り返し聴きたいアルバムになっていたことでしょう。もちろん、ノーマルCD以上のスペックで聴ければ、それに越したことはありません。

CD Artwork © Signum Records
by jurassic_oyaji | 2013-11-11 20:46 | 合唱 | Comments(0)