おやぢの部屋2
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BRITTEN/War Requiem
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Anna Netrebko(Sop), Ian Bostridge(Ten)
Thomas Hanpson(Bar)
Antonio Pappano/
Orchestra, Coro e Voci Bianche dell'Accademia Nazionale di Santa Cecilia
WARNER/6 15448 2




今年の「戦争レクイエム」ラッシュはすごかったですね。新しく録音されたのが1月のマクリーシュ盤、3月のヤンソンス盤、そして6月にはこのパッパーノ盤ですよ。こんなレアな曲が1年に3度も録音されるなんて、まさに前代未聞です。しかも、同じ6月にはラトルとベルリン・フィルのライブがあり、その映像もネットで「有料配信」されていますから、実際には「年間4度」ということになりますね。いや、そもそもこのラッシュは2009年から続いていて、その年と翌年の小澤盤、2010年にはもう一つズヴェーデン盤、そして2011年のノセダ盤、2012年のネルソンスの映像ときて、今年に雪崩れ込んだのでした。
これだけの大編成の曲ですから、マクリーシュ盤を除いてはすべて実際のコンサートを録音したものでした。ですから、録音としてはかなり出来、不出来が現れてきます。特に、声楽陣とオーケストラとのバランスでは、なかなか理想的なものにはお目にかかれません。今回のパッパーノ盤も、そもそも音には期待できない旧EMIによる録音ですから、特に合唱に関してはかなり悲惨な結果に終わっています。この曲から、質感あふれる合唱のサウンドを期待している人には、お勧めできません。特に、児童合唱の扱いがかなりひどくて、ぜひ聴こえてほしいところがことごとく目立たなくなっています。
しかし、そんな録音は覚悟の上で、ぜひとも購入したいと思えるだけの魅力がこのアルバムにはありました。それは、アンナ・ネトレプコがソリストとして参加していたことです。最近集中的にこの曲のいろいろな演奏を聴いてみて痛切に感じたのが、このソプラノ・パートにふさわしい人材の不足です。どれを聴いても、何かスケールが小さくて満足できなかったのですよ。そう、それは、1963年のDECCAによる初録音の時のソプラノ、ヴィシネフスカヤのインパクトがあまりに強すぎるゆえの不満だったのです。しかし、同じロシアのネトレプコであれば、そんな不満も解消してくれるかもしれませんからね。
確かに、彼女はとても素晴らしい声を聴かせてくれました。しかし、やはりヴィシネフスカヤに比べると、依然として小粒であるという印象は免れません。いや、デビュー当時のネトレプコはこんな声ではなかったはずです。間違いなく、もっと強靭な高音を誇っていたという記憶があります。しかし、このCDで聴かれる彼女の声は、その強靭だった音域で何か逃げてしまっているように思えてなりません。とても残念です。
その分、他のソリストはとても素直に聴けました。これも、たくさん聴いてきた中で感じてきたことですが、この男声パートは、あまりテンションが高くない方が、今の時代には受け入れやすいのではないか、という気がしています。そういう点では、このボストリッジとハンプソンというコンビは理想的です。オーウェンの詩を冷静に、しかも美しく伝えるすべが、今ほど求められている時はないのではないでしょうか。そして、それを支えるアンサンブルのパートが、ここでは極上の演奏でそんな思いを心地よく伝えてくれています。このアンサンブルにこれほどの魅力を感じたのは、ほとんど初めてのような気がします。
いや、本体のオーケストラも、金管のバランスなどはひどいものですが、逆にそれがあまりシリアスにならない、どちらかと言えば「明るい」レクイエムを作り上げることにつながっています。これは、パッパーノがパッパーっとした性格だったからなのでしょうか。「Offertorium」の途中、「Sed signifer santus Michael」という部分で、いきなり「俺はジャイアン」と聴こえたような気がするのは、決して偶然ではありません。
これで、もうこの作品とは縁が切れるな、と思っていたら、なんと1962年の初演の模様がCD化されてしまいました。これも近いうちに。

CD Artwork ©Warner Music UK Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2013-11-17 20:07 | 合唱 | Comments(0)