おやぢの部屋2
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Entre elle et lui
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Natalie Dessay(Vo)
Michel Legrand(Pf)
Pierre Boussaguet(Cb)
François Laizeau(Dr)
ERATO/934148 2




このERATOというレーベルは、もともとは1953年に創設され、この間のヴェルナーの一連の録音なども手掛けた、フランスの由緒あるレコード会社でした。しかし、1992年にWARNERの傘下に入ってからは、なにか「飼殺し」のような状態が続き、ついに2002年には活動を停止させられてしまいます。
その後、2013年にすでにUNIVERSALに買収されていたEMIのうちのクラシック部門だけがWARNERによってさらに買収された時には、かつて、EMIが買収したVIRGINレーベルも一緒にWARNERのものになりました。そこでWARNERは、その受け皿としてこのERATOというレーベルを用意しました。つまり、今まで「VIRGIN」と呼ばれていたものは「ERATO」に(そして、「EMI」と呼ばれていたものは「WARNER」に)名前が変わってしまったのですよ。まあ、言ってみれば今まで「吉田」という苗字だった人が嫁に行って「福原」と呼び名が変わるようなものですね。
ということで、今まではVIRGINのアーティストだったナタリー・デセイは、これからはERATOのアーティストとなるのでしょう。その彼女が、もちろんERATOレーベルからソロアルバムを出しました。タイトルは「彼女と彼の間」という、意味深なもの、いったい彼女と彼の間に何があったというのでしょう。その「彼」というのは、ミシェル・ルグラン、映画音楽の作曲家やジャズピアニスト、さらにはクラシックの指揮者としても大活躍というものすごい人です。ラグラン袖のスウェットがお気に入りだとか(ウソですからね)。
ルグランが映画に付けた音楽の中には、ただのBGMではなく、殆どミュージカルと言ってもかまわないようなものがあります。それが、1964年に公開された「シェルブールの雨傘」と、1967年に公開された「ロシュフォールの恋人たち」です。このアルバムには、もちろんそれらの作品からのナンバーが含まれていて、まず「ロシュフォール」からの「デルフィーヌの歌」が最初に歌われています。ルグランの軽やかなピアノ・ソロに乗って聴こえてきたのは、まさに「シャンソン」そのものでした。とても奇麗なフランス語で(当たり前!)、囁くようなハスキーな歌い方は、「クラシック」とは全く無縁の、とびきりの魅力を持ったものでした。デセイって人は、こんな歌い方もできるんですね。
ただ、その次に出てきた同じ「ロシュフォール」のナンバー、「デルフィーヌとランシアン」では、ものすごい早口言葉が要求される歌詞に、ちょっと乗りきれないところがあって、まあそれもご愛嬌、みたいな感じです。ロッシーニの早口とはちょっと性質が違いますから、無理もないな、と。
そして、この映画の中で最も有名な「双子姉妹の歌」では、「双子」としてパトリシア・プティボンが加わります。ものすごいキャスティングですね。プティボンだってデセイと同じぐらいの芸達者ですから、期待したっていいでしょう。ところが、これがとことんつまらないんですね。まずはリズム感。二人とも、ルグランならではのシンコペーションがガタガタで、オリジナルの軽快さが全く感じられません。そして、もっとひどいのが音程です。おそらく、音域的に地声で歌うにはちょっと高すぎるのでしょう、そこで、いきおいベル・カントを混ぜようとした結果、音程が犠牲になってしまっているのですね。それを二人でやっているので、もう最悪です。
もっとひどいのが、「シェルブール」の中の最も有名なギィとジュヌヴィエーヴのデュオ(この曲にはタイトルがないんですね)です。コーラスごとに半音ずつ上がっていくという構成ですが、上がっていくたびにどんどんコントロールが出来なくなって行くんですね。1曲目で見せてくれた「シャンソン」は一体どこへ行ってしまったのかと、途方に暮れてしまいます。ルグランは、クラシックの歌手が歌うにはハードルが高すぎることだけを見せつけてくれたアルバムでした。

CD Artwork © Erato/Warner Classics UK Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2013-11-25 20:26 | ポップス | Comments(0)