今年、2013年の3月に開催されたバーデン・バーデン・イースター音楽祭のオープニングを飾ったラトルとベルリン・フィルによる「魔笛」公演の模様が収録されたBDが発売になったというので、買ってみました。しかし、実は同じもの(厳密にはちょっと違いますが)が5月ごろにBSで放送されていて、それはしっかりBDに録画していたのを、すっかり忘れていたのですね。今回のBD-ROMの封を切って、中の写真を見てみたら、これと同じものをすでに見ていたことに気が付いてしまいました。なんという間抜け。
一応念のため、放送されたものと同じであることを確認しようとBDを再生してみました。そうしたら、カット割りがずいぶん違っていました。やはりかなり編集されていたのですね。それよりも、音がBSに比べて格段に素晴らしいのには驚きました。確かに、このパッケージでは、「PCM」とか「DTS-HD」というお約束の用語が見られますから、おそらく24/96ぐらいのBDの標準的な音声スペックなのでしょう。一方のBSでも、かつては「CDよりも良い音」というのがうたい文句になっていたはずですから、やはり同じような音だろうな、と、録画してあったBDを同じシステムで聴き比べてみたら、これがぜ~んぜん違っていたのですよ。BSの方はCD並かそれ以下、しかしこのBD-ROMはまさにハイレゾ、SACDあるいはBDオーディオと比べても遜色のない音だったのです。とにかく、弦楽器の艶やかさがだれが聴いても分かるぐらい違っているのですね。BSだけ聴いていた時には、なかなかいい音だと思っていたんですけどね。 調べてみたら、BSが「CDよりも良い音」と言われていたのは「BSアナログ」の時代の話、その時でもスペックは「16bit/48kHzPCM」ですから、これでは、確かにCDよりはいくらかマシですが、「ハイレゾ」とは言えませんね。それが「BSデジタル」になってからは、なんと圧縮音源である「AAC」になってしまったというのですね。これは、悪名高いNMLが採用しているのと同じ音源ではありませんか。あちらは間違いなく「CDよりはるかに悪い音」ですよ(ビットレートが若干違うようですが、AACに関してはそれほど大きな違いはないはず)。ということは、BSはデジタル化した時点で「CDよりほんの少しいい音」だったものが「CDよりはるかに悪い音」に変わってしまっていたのですね。いやあ、画面はフルHDになったので喜んでいたら、こんなところで「改悪」が行われていたなんて。こんなこと、今まで全く知りませんでした。これでは、買ったBDの音が良いのは当たり前です。いや、BSの音が悪すぎるんですね。間違って買ってしまったBDで、とんでもない事実を知らされることになってしまいました。
これがBDのジャケットの一部ですが、なんでこんな、とても演奏できないような楽器の組み立て方をしているのでしょう。もう少し拡大してみますね。
ところで、このBDにはベルリン・フィルの「デジタル・コンサートホール」の48時間使えるヴァウチャー・コードが同封されていました。ネット配信の場合は、音声の規格はどの程度のものなのか、そのサイトに行って見てみたら、なんと「CDに迫る高音質が実現されています」ですって。ということは、「音質はCD以下」という意味なのだ、と解釈しても構わないのでしょうね。おそらく、BSと同等の音質なのでしょうね。
結局、「放送」や「配信」の映像に関しては、音についてはそんなものなんだ、という認識が必要だったのですね。販売されているBDなどの音があまりに素晴らしいのでついそれと同じものが放送などでも聴けるものだ、と漠然と考えていたことは、間違いだったことになります。本当に「良い音」で映像作品を味わいたいと思ったら、パッケージとしてのBDを買う必要がある、ということになるのでしょうね。
ハイレゾの音声ファイルが「配信」で簡単に手に入る時代なので、ちょっと錯覚に陥りがちですが、映像信号にはハイレゾ音声など比較にならないほど大量のデータが必要になるはずです。それを「配信」でやり取りするのはまだまだ大変なことなのでしょう。そうなると「ライブ・ビューイング」などは、どの程度のクオリティが確保できているのか、気になりますね。あちらは専用の回線を使ったりして、大量のデータを送ることが出来るようになっているのでしょうか。