おやぢの部屋2
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Paths Through The Labyrinth - The Composer Krzysztof Penderecki
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Anna Schmidt(Dir)
C MAJOR/9861




先日NHK-BSで、昨年2013年に80歳を迎えたポーランドの作曲家、クシシトフ・ペンデレツキのドキュメンタリー映像を放送していました。これはいずれBDDVDとしてリリースされるということなので、ちょっと先走ったレビューです。
タイトルが「迷宮の小道」という大層なものですが、これはこの中で作曲家自身がたびたび口にしている「作曲とは、迷路の中を歩いているようなものだ」という、分かったような分からないような語録に由来するものなのでしょう。しかも、その「迷宮」というか、「迷路」の中を実際に歩き回っている彼の映像がシンクロしているという具体性までくっついていますから、いやでも納得させられてしまいます。そこで驚いてしまうのは、その生垣で作った背の丈ほどもある迷路などが点在している広大な庭園が、彼の自宅の敷地内にあるということです。いや、実はそんな瀟洒な庭園などはごく一部分、その背後に広がる巨大な樹木が生い茂る、なんと30ヘクタールにも及ぶ山野が、そのまま「自分の土地」だというのですから、彼はまさに「大地主」いや、もっとはっきり言えば「大金持ち」です。ロック界のスーパースター、マイケル・ジャクソンの「自宅」だって、これほど広くはないのではないでしょうか。
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そう、ロック・アイドルならいざ知らず、かつては「前衛」と言われていたクラシックの「現代作曲家」が、こんなにリッチな生活をしているなんて、とても信じられない、というのが、まずこの映像を見ての率直な感想なのでした。我ながら、なんと浅ましい。
そんな田園風景から、いきなり画面が野外ロック・フェスの会場へと変わります。詰めかけた何万人という聴衆の前に姿を現したのは、ペンデレツキその人、そして、彼に指揮されたステージ上の弦楽オーケストラが奏ではじめたのは、なんと彼の半世紀前のヒット曲「広島の犠牲者にささげる哀歌」ではありませんか。作られたころはお客さんはみんな眉間にしわを寄せて、ひたすら拷問のような音響に耐えていたというこの「前衛作品」に、お客さんたちは何の抵抗もなく、それこそ大音響のヘビメタでも聴くような感覚で、喝采を送っているのですよ。演奏者がアップになると、彼女ら(女性奏者が圧倒的に多いようでした)はいとも嬉々とした表情で、時には笑いながら、この、本来は難解そのものの音楽を全身で楽しんでいるようでした。
なにかが確実に変わっています。この頃のペンデレツキの作品に対して、今まで考えられなかったような方面からの「ファン」がいつの間にか生まれていたのですね。これに関しては、思い当ることがありました。それは、以前こちらでご紹介したレディオ・ヘッドのメンバー、ジョニー・グリーンウッドのアルバムです。これはこの映像のフェスの1年前に録音されたもの、これはまさにこのアルバムを引っさげてのライブだったのでしょう。もちろん、ここではそのペンデレツキの熱狂的なファンであるグリーンウッドの作品も演奏されていました。
ここで重要なことは、このフェスで聴衆が熱狂的に聴いていたのは、ペンデレツキの「過去の」作品だったということです。彼らが現在の彼の作品を聴いたら、いったいどのように感じるのか、非常に興味のあるところです。
このドキュメンタリーのハイライトは、先ほどの自分の地所の中に作られた、「クシシトフ・ペンデレツキ・ミュージック・センター」という名前のコンサートホールの、こけら落としコンサートです。彼の資産は、途方もないガーデニングだけではなく、ホールを1軒やすやすと建ててしまえるだけのものだったのです。この映像で語られているのは、彼より120年ほど前に生まれた作曲家は、自分のホールを作るためにパトロンに無心して国家予算をつぎ込ませたというのに、現代の作曲家はそれを自費でやれるほどお金を持っていた、というお話です。BDが出たらじひ(ぜひ)見てみてください。
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Package Artwork © C Major Entertainment GmbH
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by jurassic_oyaji | 2014-01-22 20:27 | Comments(0)