おやぢの部屋2
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HINDEMITH/Violin Konzert, Symphonic Metamorphosis
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五嶋みどり(Vn)
Christoph Eschenbach/
NDR Sinfonieorchester
ONDINE/ODE 1214-2




昨日は、アメリカで「世界最大の音楽賞」と言われている「グラミー賞」の授賞式が行われました。対象は、もちろん女性だけです(それは「グラマー賞」)。
今回も、日本人アーティストが受賞するのではないかということで、様々な下馬評が飛び交っていましたが、あいにくそのような人たちは受賞を逃したようですね。ところが、全く期待されていなかったクラシックの部門で、なんと五嶋みどりさんという押しも押されぬ日本人アーティストが受賞したということで、全く何の準備もなかったその方面の業界はてんやわんやの騒ぎになっているのだとか。
それは、全部で82もある部門の中の79番目、「BEST CLASSICAL COMPENDIUM」というちょっと意味不明のものです。賞自体は、指揮者のクリストフ・エッシェンバッハに対して贈られるもののようですが、そこに五嶋みどりさんがソリストとして参加していたため、「日本人がグラミー賞を受賞!」という報道が飛び交うことになったのです。
そのアルバムが、これ。リリースされたのは昨年ですが、その年はパウル・ヒンデミットの没後50周年にあたっていたということで企画された、ヒンデミットの曲集です。メインタイトルは、「ヴァイオリン協奏曲」、その他に、「ウェーバーの主題による交響的変容」と、「協奏音楽」が収録されています。「ウェーバー~」以外は全く聴いたことのない曲ですが、せっかくですのでみどりさんの活躍している「ヴァイオリン協奏曲」を聴いてみることにしました。
古典的な3楽章形式による協奏曲、第1楽章では、いかにもヒンデミットらしいクールな和声が迫ってきます。ちょっと人工的なテイストなのは仕方がありませんが、オーケストラの響きはとても充実していて、すんなり入って行けます。ヴァイオリンは、ここではそれほどソリスティックにテクニックを披露する、といったものではなく、淡々とそのクールさを楽しむかのようにオーケストラに寄り添います。全然力みのない自然な佇まいが、こういう音楽にとてもよく合っています。
第2楽章も型通りのゆっくりとしたもの、ヴァイオリンは、ひたすら静かな情景を描いています。この、情感を表に出さないような奥ゆかしさは、なんだか日本人の感性とマッチしているように思えます。しばらくすると、その静かさは荒々しいオーケストラのトゥッティにかき消されますが、それがひとしきり収まった後に、まるで何事もなかったかのようにやってくる静かなヴァイオリンが、とても素敵です。
第3楽章は、いきなりクライスラーの「中国の太鼓」のような、東洋的で軽やかな音楽で始まります。ここに来てやっと、ヴァイオリンの技巧を楽しめるようになりますが、それもしばらくするととても息の長い、やはり東洋風のヴァイオリン・ソロによって、落ち着きを取り戻します。そのテーマは、2度目に現れたときには、1オクターブ上の音になり、より切なさ、あるいははかなさといったような情緒が漂い、それがそのまま長大なカデンツァへとつながります。このカデンツァは見事としか言いようがありません。
おそらく、ヒンデミットの作品の中では最も演奏頻度の高い「交響的変容」は、長いこと最後の最後に出てくるテーマ以外は「どこがウェーバー」という気がしていました。そこで、その楽章ごとの「元ネタ」の音源を探して聴いてみたところ、この作品の骨組みは、ほとんどウェーバーのオリジナルと同じであることが分かりました。今頃、と言われそうですが、ヒンデミットが施した「変容」というのは、その骨組みに彼なりの和声とオーケストレーションを与えることだけだったのです。それと、最後の「マーチ」では、オリジナルのトリオの部分を拡大してそのまま盛り上げて終わるという形に変えただけなのですね。そんな、ヒンデミットのニヒリズムが、エッシェンバッハの演奏からは良く伝わってきます。

CD Artwork © Ondine Inc.
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by jurassic_oyaji | 2014-01-28 23:04 | 禁断 | Comments(0)