おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
TCHAIKOVSKY/Piano Concertos Nos 1 & 2
c0039487_2018374.jpg


Denis Matsuev(Pf)
Valery Gergiev/
Mariinsky Orchestra
MARIINSKY/MAR0548(hybrid SACD)




チャイコフスキーのピアノ協奏曲と言えば、なんたって「第1番」が有名ですね。あまりに有名なために、彼のピアノ協奏曲はこれしかないのだ、と思っている人も少なくないのではないでしょうか。彼にはほかにまだ2つもピアノ協奏曲があるというのに。さらに、「協奏曲」という名前は付いていませんが、「協奏的幻想曲」という、ピアノとオーケストラのための2楽章から成る堂々たる作品もありますし。
「第1番」が作られたのは1875年ですが、1880年には「第2番」が作られました。さらに、最晩年の1893年には、未完の交響曲をピアノ協奏曲に転用した「第3番」だって作られています。もっとも、この「第3番」は演奏時間が15分ぐらいの一つの楽章しかありませんから、確かに他の2曲にはちょっと引けを取っています(ちなみに、この元になった交響曲は、1955年にセミョン・ボガティレフという人によって「交響曲第7番」として復元?されました)。しかし、「2番」の演奏時間は「1番」よりも長く、堂々たるものですから、もっと自信をもってもらいたいものです。
そんな有名な「第1番」ですが、これにはとっても不思議な部分があります。それは、第2楽章のテーマが、最初にフルート・ソロによって演奏されるものと、それを受けてピアノ・ソロが弾き出すものとが、違うメロディになっているということです。
c0039487_20204173.jpg

これは、その後どんな楽器で出てきても、すべてピアノと同じもの、おそらく、この曲を初めて聴いた人は、なぜフルートだけが違うメロディを弾いているのか不思議に思うはずですが、さすがに「名曲」として親しまれているものですから、「これは音が違っている」などと言い出す勇気のある人はいませんでした。というか、もうこれはこういうものなのだ、と寛容に受け止められるようになっているのが現状なのでしょう。そこに最近、イギリスのピアニスト、スティーヴン・ハフが、はっきりした証拠を突きつけて「フルートの音が間違っている」と言い出しました。その「証拠」というのが、ベルリン国立図書館所蔵の、この曲の自筆譜です。こちらで現物を見ることが出来ますが、確かにフルートの「F」の音を青鉛筆で「B♭」に直した跡がはっきり分かりますね。やはり、これはピアノと同じように吹くのが、作曲家の本心に従ったやり方なのでしょうか。
ただ、こんな、誰でもネットで見られるほどの物に、他の誰も気が付かなかった、という方が、よっぽど不思議なことのような気がするのですが、どうでしょう。
ちょっと調べてみたら、実際には1950年代あたりの録音では、結構B♭で演奏しているものがありました。その中には、モントゥー指揮のロンドン響とか、ライナー指揮のシカゴ響のようなメジャーどころもありましたね。しかし、最近のものとしてはネシュリング指揮のサンパウロ響(BIS/2006年)しか見つかりません。今回ハフが訴えたことによって、この状況は変わるのでしょうか。もちろん、今回のSACDでのゲルギエフ指揮のマリインスキー管弦楽団のフルート奏者も、今まで通りの「F」で演奏していますし。
ここでは、そんなマニアックなものではなく、あくまでマツーエフの、まさに「完璧」と言っていい演奏を思う存分楽しむべきでしょう。「1番」のような難曲をいとも軽々と弾いてくれる様は爽快そのものですし、それに加えて第1楽章の第2主題などのような繊細極まりない表現にも圧倒されます。そして、なんでも「2番」では通常カットされる部分もしっかり演奏されているのだとか。これを彼のピアノで聴けば、きっとこの曲がもっと頻繁に演奏されて欲しいと、心から望むようになることは間違いありません。きっとチャイコフスキーは、第3楽章の胸のすくような鮮やかさを、このような演奏で堪能してほしいと思っていたんのうではないでしょうか。

SACD Artwork © State Academic Mariinsky Theatre
[PR]
by jurassic_oyaji | 2014-01-30 20:22 | オーケストラ | Comments(0)