おやぢの部屋2
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MERCADANTE/Flute Concertos Nos. 1,2, and 4
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Patrick Gallois(Fl)/
Sinfonia Finlandia Jyväskylä
NAXOS/8.572731




サヴェリオ・メルカダンテのフルート協奏曲は、作曲家がまだナポリ音楽院で学んでいた1813年から1819年の間に「5曲」作られたと考えられています。ただ、現在出版されている楽譜には単に調性が記されているだけで、番号は付けられてはいません。録音にしても3曲収録されていた1987年のゴールウェイ盤では単に「ニ長調、ホ短調、ホ長調」としか表記されていませんでした。さらに、2004年に録音された「全曲盤」でも、曲順が一応作曲された順番になっていましたが、そこに番号が付けられることはありませんでした。ただ、そのCDのブックレットでは、一応慣例的な番号があることは示唆されてはいましたね。
2011年にパトリック・ガロワが「吹き振り」した今回のCDでは、なんとタイトルとして堂々と「番号」が付けられていましたよ。なんせNAXOSのことですから、それはいい加減なでっち上げかな、と一瞬警戒してみましたが、それはきちんとさっきの「全曲盤」で述べられていた内容と同じだったので、まずは一安心です。
一応整理しておくと、曲は「5曲」しかありませんが、番号は「6番」まで付いています。「1番」はホ長調、「2番」が、その第3楽章が1983年にベルディーン・ステンベルグというオランダのアイドル・フルーティストがディスコ・ビートに乗せて演奏したもの(こちらにあります。この映像はええぞう)が大ヒットしたことで有名になったホ短調なのですが、この曲は後に他の人の手によって「小さなオーケストラ」のために書き換えられました。それが「3番」なのだそうです(NAXOSの面目躍如というか、この曲についてブックレットの英訳では「変ホ長調」と、イタリア語の原文にはないことが記されています)。気を取り直して、「4番」はト長調、「5番」はヘ長調、「6番」はニ長調の曲ということになります。ですから、ゴールウェイ盤には「1番、2番、6番」が収録されていることになりますね。ガロワは「6番」の代わりに「4番」を演奏している、と。どちらにも入っていない「5番」はクラリネットとトロンボーンがオブリガートで加わるという不思議な編成ですから、おそらく「全曲盤」に入っているものが唯一の録音なのではないでしょうか。
メルカダンテのフルート協奏曲では、どの曲でも第1楽章では最初にかなり長いオーケストラの序奏が演奏されています。最初に入っている「2番」の序奏が聴こえてきた時に、そのオーケストラの響きがとんでもなく貧しい録音によるものであったことには、大きな失望を感じないわけにはいきませんでした。このレーベルも、最近はBAなども積極的に展開、録音に関しても先進的な姿勢を打ち出しているのでは、と思っていただけに、旧態依然のこのひどい録音には心底がっかりしてしまいます。何しろ響きに潤いがないものですから、演奏までもがヘタに聴こえてしまいますし、そのあまりに平板な音場は、ハイレゾを聴きなれた耳にはほとんど苦痛でしかありません。
そこに、ガロワのソロが入ってきます。予想はしていたものの、相変わらずのヘンタイぶりにはちょっとたじろいでしまいます。

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ソロの最初のフレーズはこういうものなのですが、最初の小節の後半の「ターン」の扱いが、なんとも不自然なのですよ。まあ、「ツカミ」ですから、インパクトから言ったらこれ以上のものはありませんが、それも度が過ぎると単なる子供じみた振る舞いにしか見えなくなってしまいますから、難しいものです。同じことをオーケストラにもやらせているのですが、嫌がって弾いているのはミエミエですし。
しかし、2楽章での自由な装飾はまさに「大家」ならではのゴージャスなものですし、終楽章の目にもとまらぬ「速吹き」にも圧倒されます。ただ、それが単に「速い」だけであまり音楽的ではなく、「それがどうした」と感じられてしまうのは困ったものです。同じ速さでもゴールウェイからは確かな音楽が感じられたというのに。

CD Artwork © Naxos Rights US. Inc.
by jurassic_oyaji | 2014-02-01 21:20 | フルート | Comments(0)