おやぢの部屋2
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LIGETI/Violin Concerto, Orcheatral Works
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Benjamin Schmid(Vn)
Hannu Lintu/
Finnish Radio Symphony Orchestra
ONDINE/ODE 1213-2




人気の映画、「ゼロ・グラビティ」を見てきました。大画面によってまるで本当に宇宙空間にいるような疑似体験をもたらす映像はまさに圧巻でしたが(酔っぱらう人もいるとか・・・それは「熱燗」)、そのバックで流れている音楽も、観客に媚びるありがちなものではなく、とことんハードに迫っていることにも好感が持てました。それは、このハードな映像との見事な融合を成し遂げていたように感じられます。そして、この完璧なコラボレーションを楽しんでいるうちに、かつて同じようなシチュエーションの映画を体験していたことを思い出していました。それは、半世紀前に作られたスタンリー・キューブリックの名作「2001年宇宙の旅」です。そこでは、既存の「クラシック」の曲がそのまま使われていたのですが、その中でも同じ時期に作られたばかりのリゲティの作品たちは、まるでこの映画のために作られたかのようなマッチングさえ見せていたのです。
まさにその時にスクリーンから流れていた「ルクス・エテルナ」の平静感、そしてクライマックスでの「アトモスフェール」のとてつもない破壊力が、「ゼロ・グラビティ」のスティーヴン・プライスによるスコアから感じられたのは、決して偶然ではないような気がします。リゲティよりほとんど半世紀後に生まれたこのイギリスの作曲家は、監督のアルフォンソ・キュアロンが多くのシーンでキューブリックへのオマージュを試みているように、間違いなくリゲティの音楽へのリスペクトによって今回の音楽を作るにあたってのモチベーションを高めていたことは、想像に難くありません。
もちろん、プライスのスコアからは、リゲティの曲が持つざらざらとしたテイストはサッパリとなくなっていて、かなり耳当たりの良い音楽が聴こえてきます。それはおそらく、50年というスパンの中での音楽のありかたの劇的な変化とは無関係ではないはずです。
このCDには、「若手」が中心になった演奏家によって2012年から2013年にかけて録音された、リゲティのヴァイオリン協奏曲と3つのオーケストラ作品(「アトモスフェール」、「ロンターノ」、「サンフランシスコ・ポリフォニー」)が収録されています。
まずは「ロンターノ」を聴いてみます。この曲は、ほぼ同じ時期に作られた「ルクス・エテルナ」とは「姉妹曲」同士だと言われているそうですが、今まではそんなことは気づきもしませんでした。しかし、驚いたことに、ここで聴けるものは、まさにその精緻な無伴奏合唱曲と全く変わらないテイストではありませんか。おそらく、弦楽器の澄み切った音色と、伸びやかなフレージングが、そのような印象を与えてくれた要因なのでしょうが、これほどまで合唱曲と同じサウンドの志向性を持った演奏には、初めて出会ったような気がします。いや、これは合唱曲よりもキャッチーなサウンドに仕上がっているかも。
そこで、「アトモスフェール」を聴いてみると、これも今まで聴いてきたものとはまるで違った、とても「美しい」ものに感じられてしまいます。とにかくオーケストラの音色がとても滑らかでソフト、それはまさに「今」のサウンドだったのです。
もうお分かりだと思いますが、この2曲はまさに「ゼロ・グラビティ」の中で流れていても何の違和感もないだろうと思えるようなものだったのです。リゲティの作品には、そんな、時代の変化に見事に対応できるだけのしたたかさがあったのですよ。
もう少し後に「ヴァイオリン協奏曲」を作るころには、そんな「したたかさ」はすでに目に見えるものとしてはっきり表に出てきていることが、この演奏からはよく分かります。第2楽章でのソロ・ヴァイオリンのたっぷりとした「歌」、そのバックのオカリナやリコーダーによる中世風の佇まい、それは、似たようなことをやっているペンデレツキなどとは全く異なる志から出てきたものであることも。

CD Artwork © Ondine Oy
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by jurassic_oyaji | 2014-02-09 20:33 | 現代音楽 | Comments(0)