おやぢの部屋2
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MOZART/Le Nozze di Figaro
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Andrei Bondarenko(Conte), Simone Kermes(Contessa)
Fanie Antenelou(Susanna), Christian Van Horn(Figaro)
Mary-Ellen Nesi(Cherubino), Maria Forsström(Marcellina)
Teodor Currentzis/
Musicaeterna
SONY/88843014172(BA)




こちらでとても素晴らしい「レクイエム」を聴かせてくれたギリシャ出身の指揮者クレンツィスが、今度はレーベルをSONYに変えて「フィガロ」全曲を録音してくれました。「レクイエム」のときと同じ、ロシアの歌劇場付きのオーケストラ「ムジカ・エテルナ」が演奏しているので、あの時(2010年)と同じシベリアのノヴォシビルスクの歌劇場での録音かな、と思っていたら、こちらはなんとウラル山脈の麓の都市、ペルミの国立歌劇場ではありませんか。実は、クレンツィスは2011年にノヴォシビルスクを去って、こちらの歌劇場の音楽監督に就任していたのですね。言っといて下さいよ(テルミー!)。しかも、その時にオーケストラも一緒に連れていくことを要求、それがかなって前任地と同じハイレベルの仕事が出来ているのだそうです。
そんな、まさにクレンツィスの「手兵」であるムジカ・エテルナと、彼が選んだソリストたちは、ライブ録音ではなく、なんと11日間にわたってほぼフルタイムでのセッション録音に臨み、この録音を成し遂げたのだそうです。今時、SONYのようなメジャー・レーベルがそんな贅沢なことを許すだけの価値を、この若い指揮者に見出したというのがすごいところですが、彼は見事にその期待にこたえていました。ここには、彼の求める究極の「フィガロ」の姿が、見事に記録されています。
彼らが使っている楽器はピリオド楽器ですが、クレンツィスはオーセンティックなアプローチを試みるというよりは、このスタイルの方がよりモーツァルトの音楽を的確に表現できると考えていたようですね。実際、ここではモダン楽器のお上品な表現は姿を消し、ピリオド楽器ならではの幅広い表現力を最大限に引き出して、モーツァルトとダ・ポンテが作り上げたエネルギッシュなドラマを、信じられないほどの迫力で具現化しているさまを体験することが出来ます。ピッチがA=430Hzという、バロック・ピッチよりもはるかに高いものであることも、彼らの目指すところが単なる懐古趣味でないことの表れなのでしょう。
まず、序曲からして、度肝を抜かれるような衝撃的なものでした。そこでは、陰に回るべき声部までも、はっきりと自己を主張しているのがはっきり分かります。さらに、表現に必要とあらば、楽譜を改変する事も厭いません。たとえば、再現部で第2主題のモチーフが2回繰り返される時に、その2度目の前にこんな上向スケール(赤い音符)がフルートによって加えられています(T228/03:01付近)。

そして、幕開きのデュエットに続いてレシタティーヴォ・セッコが始まると、そこでの低音を演奏しているフォルテピアノの見事さに耳を奪われてしまいます。ありきたりの数字付きの低音ではなく、なんとイマジネーションが豊かなのでしょう。そんな伴奏に乗って、歌手たちも、存分にそこで「ドラマ」を演じています。なんせ、ドモリの裁判官のドン・クルツィオが登場する前では、フォルテピアノまでどもっているんですからね。パーソネルを見ると、低音にはその他にリュートとハーディ・ガーディのクレジットがあります。リュートはケルビーノの「Voi che sapete」のバックで聴こえましたが、ハーディ・ガーディは一体どこで・・・
最後の「Contessa, perdono!」という伯爵の「歌」が、およそ「オペラ的」ではない弱々しさで、リアルに究極の情けなさを表現していたことが、このオペラ全体のコンセプトを象徴しています。これほど生々しく物語が感じられる「フィガロ」は、今まで聴いたことがありません。
すでに、「コジ」は録音が終わっていて、今年の秋にはリリース、さらに「ドン・ジョヴァンニ」も来年の秋にはリリースになるそうです。それがどんなものになるのか、今から楽しみです。唯一の気懸りは、今回同様24bit/192kHzという最上位のハイレゾによるBAも出るのか、ということです。これを聴いてしまうと、もはや普通のCDのしょぼい音など、聴く気にもなれませんから。

BA Artwork © Sony Music Entertainment
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by jurassic_oyaji | 2014-02-23 20:16 | オペラ | Comments(0)