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The Magic Flute
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Tia Roper(Fl)
Mitchell Vines(Pf)
ALBANY/TROY 1437




The Magic Flute」などというタイトルだと、普通はモーツァルトの「魔笛」を連想してしまうものですが、このアルバムの内容はそれとはまってき関係ないよう
このアルバムのプロデューサーでもある、ティア・ローパーという初めて聞く名前のアメリカのフルーティストがここで目指しているのは、単に「魔法のようなサウンドの楽器」であるフルートの様々な時代、方向性の作品を集めたというコンセプトだったのでしょうが、図らずもここに登場している7人の作曲家には、いずれも自身がフルーティストである、という共通項がありました。もちろん、そんなことはブックレットのどこを見ても書いてはありませんが、これはフリードリヒ・クーラウだけはフルーティストではなかったことを考慮してのことなのでしょう。でも、そんなことはどうでもいいんです。たとえ、公式のバイオグラフィーで「フルーティスト」と書かれていなくても、これだけフルートのことを知り尽くしていて、この楽器のために膨大な作品を残してくれた作曲家なのですから、間違いなくフルートも上手に演奏できたにちがいありませんからね。
まずは、アメリカのフルーティスト、ランソム・ウィルソンの「カルメン幻想曲」です。ただ、彼は「作曲家」といわれるほどのものではなく、これは単なる「編曲者」という意味でのクレジットと考えるべきでしょう。実際、これは有名なフランソワ・ボルヌが作ったものに、彼なりのアイディアを少し付け加えただけというものです。ボルヌ版に馴染んでいる人は、その「違い」を探しながら聴くのも一興でしょう。
次は、やはりアメリカのフルーティスト・コンポーザーのゲイリー・ショッカーの「エアボーン」。彼ならではの超絶技巧が要求される曲ですが、後半にはピアソラ風のけだるいダンスが登場します。
そして、デンマークの作曲家、「ソナチネ・アルバム」でおなじみのクーラウです。「ファンタジー」は無伴奏フルートの大曲、後半のモーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」に出てくるテーマによる変奏曲にたどり着くころには、スタミナを使い果たしているという超難曲です。
さらに時代をさかのぼって、プロイセンのフリードリヒ大王の先生でもあったヨーハン・ヨアヒム・クヴァンツのフルートソナタです。もちろん、もともとはバロック時代の楽器のために作られた曲ですね。
そして、ギルドホール音楽院の教授でもある、現代イギリスのプレイヤー/コンポーザーのイアン・クラークの「オレンジ・ドーン」は、アフリカの夜明けに触発されて作られたという、瞑想的なピースです。
続く、テオバルト・ベームは、フルーティスト、作曲家のみならず、現代フルートの原型を作った楽器製作者としても知られている才人です。ここでは彼の新しい楽器の性能のデモンストレーションにはうってつけの「グランド・ポロネーズ」が選ばれています。
最後は、坂本龍一などとのコラボも行っているというイギリスのマイク・マウアーの「オーパス・ディ・ジャズ」です。文字通り、全面ジャズのイディオムが満載の3つの楽章から成る作品です。
これだけ変化に富んだレパートリーを、それぞれのテイストを的確に見極めることを怠り、どの曲も全く同じアプローチでしか演奏できていない、というのが、フルーティストのローパーの最大の問題点です。というか、この人にはそもそもその時代の音楽に必要なものは何かという意識が、まるでないのかもしれません。ぶっきらぼうな語尾からは、クーラウのロマンティシズムは全く感じられませんし、楽譜通りの演奏に終始して、「グルーヴ」までには手が回らないマウアーからは、ジャズのエッセンスを味わうことはかないません。
録音も、生音がそのまま聴こえる幼稚なもの。さらに、クーラウの後半で盛大に聴こえてくる外部ノイズに気づかないエンジニアと、それを許したプロデューサー(もちろんローパー自身)にはプロとしての資格はありません。

CD Arterok © Albany Records
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by jurassic_oyaji | 2014-02-25 23:38 | フルート | Comments(0)