おやぢの部屋2
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TCHAIKOVSKY/Piano Concerto No.2
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Boris Berezovsky(Pf)
Alexander Vedernikov/
Sinfonia Varsovia
MIRARE/MIR 200




チャイコフスキーのピアノ協奏曲第2番などという「珍しい」曲の新譜が、こちらに続いてリリースされました。あちらは2013年の録音で、こちらは2012年、もう少しすると「第3番」の新しい録音も出るはずですから、これは「チャイコフスキーのマイナーなピアノ協奏曲」に光が当たる時代がついにやってきた、ということなのでしょうか。
ただ、この作品については、曲目解説などを読むと「改訂」だの「カット」だのといった言葉が頻繁に顔を出します。このあたりをきちんと押さえておかないと馬鹿にされそうですから、まずは基本的な出版の経緯を調べてみましょうか。
曲が完成したのは1880年で、1881年には初版が出版されています。しかし、チャイコフスキーのかつての生徒で、当時は彼の作品の校訂などを行っていたアレクサンドル・ジローティが、この曲の、特に第2楽章があまりに長すぎるとして、チャイコフスキーの死後の1897年に改訂版を同じ出版社から出版します。それ以来、この曲の演奏にはこの改訂版が使われることになりました(チャイコフスキー自身は、一部のカットは認めたものの、改訂そのものは認めてはいなかったそうです)。ジローティの弟子でモスクワ音楽院の院長も務めたアレクサンドル・ゴリデンヴェイゼルによって作曲家の自筆稿に基づくオリジナル版が出版されたのは、1955年になってからのことでした。
ジローティの改訂は、全ての楽章に及んでいました。第1楽章では、経過的な部分である319小節から342小節までをカットしています。そして、第2楽章では、332小節あるオリジナルのうちの191小節もカットするという大ナタを振るっています。そのうちの15小節はエンディング直前のちょっとした経過部ですが、残りの176小節は、この楽章のユニークなところであるピアノのほかにヴァイオリンとチェロがソリストとして大活躍する部分を丸ごとカットしています。カット開けは唐突にピアノ・トリオが始まってしまいますし、そもそもオープニングのヴァイオリン・ソロが、ピアノ・ソロに変えられています。
第3楽章では、尺は変わっていませんが、ところどころでピアノ・ソロの音型が少し変えられています。
そんなことを目安に、NMLあたりでポイントを聴き比べてみると、例えばエミール・ギレリスといった「大家」は、1959年の録音ではまだ改訂版を使っているのは仕方がないとして、1966年の録音でもしっかり改訂版を使っていることが分かります。一度覚えたものは、そうそう直すことはできないのでしょうね(指揮者はいずれも今度裸身、いやコンドラシン)。
しかし、最近の演奏家のものでは、ほぼみんなオリジナル版で演奏するようになっているようです。もちろん、作曲家が許したとされる第1楽章と第2楽章のエンディングのカットも行っていません。ところが、先日のマツーエフは、第2楽章のエンディングだけカットしているのですね。インフォには「原典版」とあるのに。そして、今回のベレゾフスキーも、第1楽章と第2楽章のエンディングの2か所でカットが入っています。これは、インフォでは正直に「オリジナル版だが、チャイコフスキーが認めたカットがある」とありますが、これはなんか変。カットが入った「オリジナル版」なんて、あるんでしょうか。
今回のCDは、オーケストラがちょっと小ぶりです。それもあってか、ピアニストは力任せにガンガン弾く、というようなことはやらずに、もっと爽やかなところで勝負を仕掛けているようです。特に、ピアノのソロとフルートなどの木管が絡むところでは、しっかりアンサンブルが出来ているように感じられます。ですから、ヴァイオリン、チェロ、ピアノの3者がソリストとなる、いわば「合奏協奏曲」の形を取った第2楽章では、得も言えぬ爽やかな風が吹きます。こんな素晴らしいところをカットしてしまったジローティの気がしれません。

CD Artwork © Mirare
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by jurassic_oyaji | 2014-02-27 20:44 | オーケストラ | Comments(0)