おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
TCHAIKOVSKY/Ballet Suites
c0039487_20295524.jpg





Herbert von Karajan/
Wiener Philharmoniker
DECCA/00289 478 5028(BA)




2008年のカラヤン・イヤーに、こんなボックスを買ってました。まさにルーティン・ワークそのもののベルリン・フィルとのDG盤などは別に聴きたいとは思いませんが、この5年ほどの間のウィーン・フィルとの録音は、ちょっとそれとは違うような気がしていたものですから。それと、一番の魅力は、当時のDECCAの伝説的なエンジニア、ゴードン・パリーが録音を手掛けていた、というところでした。「指環」をはじめとしたこの頃のパリーの録音は、リアルタイムにLPで聴いていて、そのゴージャスな響きにはとことん惚れ込んでいたものですから、これもまとめて聴いてみようと「大人買い」に走ったのですね。
しかし、演奏はそこそこ興味深いものでしたが、音に関しては完全に失望させられました。かつて聴いていたパリーの録音では必ず味わえたはずの滴るような豊かな響きが、このCDでは全く味わうことが出来なかったのです。
しかし、そのうちにこの周辺の録音がSACD、さらにはBAで聴くことができるようになり、ボックスの5枚目として1枚のCDに収められていたこのチャイコフスキーの「3大バレエ曲」もめでたくBA化されることとなりました。
実は、CDだから1枚に入っていましたが、この中で「くるみ割り人形」と、そのほかの「白鳥の湖」と「眠れる森の美女」では録音時期が異なっています。「くるみ割り」は1961年に録音されて、同じ時に録音されたグリーグの「ペール・ギュント組曲」とのカップリングでLPがリリースされていますが、他の2曲は1965年に録音、この2曲のカップリングでのリリースでした。CDでもBAでも、「白鳥」、「くるみ」、「美女」という順序でカットされていて、真ん中に古い録音が挟まれている、という状況になっています。
早速、頭から前のCDと聴き比べてみると、もうその違いはすぐに分かりました。BAの「白鳥」の「第2幕の情景」からは、まぎれもない「パリー・サウンド」が聴こえてきたのです。オーボエ・ソロは、まるで別の楽器かと思えるほど音色が違いますし、しっかりとした存在感を示しています。周りから聴こえてくる弦楽器のかすかなトレモロの中にも、きちんとした「意味」を感じ取ることが出来ます。そして、トゥッティになった時の弦楽器の圧倒的な輝きこそが、まさに「パリー・サウンド」の真髄です。長年聴きたかった音に、ついに巡り会えた、と思いました。
ところが、次の「くるみ」になると、間違いなくCDとは別物の音には違いないものの、「白鳥」のクオリティにはちょっと及ばないようなところが感じられてしまいます。木管あたりがかなり遠くにあってちょっと物足りませんし、何よりも弦楽器の輝きが全く不足しています。CDだと、うまい具合にマスクされていてそれほど苦にはならないものが、そんな覆われた邪魔ものがBAでは取り払われてしまって、かえって聴きづらいものになっているのかもしれません。それは、エンジニアがパリーのほかにジェームズ・ブラウンがクレジットされているためなのか、あるいはマスターテープの劣化がより進んでしまった結果なのかは、分かりません。
「白鳥」と「美女」が録音された1965年のセッションは、カラヤンとDECCAとの最後のものになりました。契約上仕方なく設けられたセッションだったようで、3月19日の1日だけで2曲のバレエ組曲を録音するという、とんでもないものになっていました。ですから、カラヤンにしては珍しいアンサンブルの乱れがそのままになっているようなテイクでも、使わざるを得なかったのでしょう。面白いのは、どちらの組曲でも、「ワルツ」がウィーン風の気取ったリズムになっていることです。しっかりリハーサルの時間がとれた「くるみ」では、きっちりイーブンの三拍子になっているのですから、カラヤンは直すのが面倒くさくて、ウィーン・フィルの言い分をきいていたのかもしれませんね。

BA Artwork © Decca Music Group Limited
[PR]
by jurassic_oyaji | 2014-03-03 20:31 | オーケストラ | Comments(0)