おやぢの部屋2
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A Tribute to Oscar Peterson
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Andrew Litton(Pf)
BIS/SACD-2034(hybrid SACD)




かなり前のことですが、2001年9月にアップした「おやぢの部屋」でこんなCDを紹介していました。「ホロヴィッツへのオマージュ」というタイトルのそのCDでは、ヴァレリー・クレショフというピアニストが、ホロヴィッツが自ら編曲したとても難度の高い曲を何どしても弾いてみたいと、楽譜が公になっていないその演奏の録音を聴きとって楽譜を書き下ろし、それを録音した、というものでしたね。
これがアップされた時には、ある「疑惑」がささやかれていました。

それは、このジャケット写真は合成ではないのか、というものです。そんな「憶測」に基づいて、このレビューの「初稿」には、その「疑惑」に関する無責任な言及が含まれていました。しかしその後、「ホロヴィッツが亡くなる直前にクレショフはニューヨークでホロヴィッツに会っていたとライナーに書かれている」という外部からの「告発」がありました。たしかに、きちんと読みなおすとそのようなことが書いてあります。その写真は「本物」だったのですね。その「告発」に従い、本文を書き直したのは、言うまでもありません。このレビューの最後にある注釈は、そのあたりの混乱ぶりを反映したものだったのですね。
今回、似たような「疑惑」を持たれたのは、指揮者のアンドリュー・リットンでした。彼はピアニストとしても活躍していて、このたびピアノ・ソロのアルバムをリリースしました。そこで取り上げているのが、著名なジャズ・ピアニストであるオスカー・ピーターソンの即興演奏なのですね。そのジャケットを飾っているリットンとピーターソンが並んで写っている写真が、そんな「疑惑」の対象でした。どうですか?もちろん、リットンの写真はかなり若いころのものなのでしょうが、これはミエミエの「合成写真」ではないでしょうか。
しかし、12年半前の轍を踏むことだけは避けたいものだ、と、今回はリットン自身が執筆しているライナーノーツを、きっちり読んでみたところ、「ジャケット写真は、1985年の7月に撮ったものだ」という証言があるではありませんか。危ない、危ない。ヘタをしたら、このBISレーベルのおかげで2度目の大恥をかくところでした。
なぜリットンがオスカー・ピーターソンを?と思うのも当然のことでしょう。そんな疑問も、彼のライナーによって晴れることになります。ニューヨーク生まれのリットン少年は、クラシック音楽の英才教育を受け、ブロードウェイ・ミュージカルに親しむという中で育ちますが、「ジャズ」に関してはほとんど未体験でした。しかし、16歳の誕生パーティーで同級生のデヴィッド・フランケル(後の「プラダを着た悪魔」の監督)からもらった1枚のレコードによって、彼の人生は変わります。それは、オスカー・ピーターソンの「TRACKS」という1970年のソロ・ピアノのアルバムだったのですが、それを聞いたとたんにリットン少年は彼のピアノにハマってしまったのです。
やがてリットンは指揮者となり、実際にピーターソンとの共演も果たします(その時に楽屋で撮ったものが、ジャケット写真)。そしてしばらくすると、それまでは聴くだけだったピーターソンのピアノを、自分でも弾くようになってしまいます。それは、ロンドンでのさるパーティーで、スティーヴン・オズボーンがピーターソンを弾いているのを聴いたからです。楽譜など出ていないはずなのに、と、オズボーンに聞いてみたら、彼は自分でCDからコピーしたというのに驚き、早速その譜面を送ってもらい、それからはそれを弾くことが彼の「趣味」となりました。その「趣味」の集大成が、このアルバムなのです。
ピーターソンが一番好きだというベーゼンドルファーをわざわざ借りて録音したというほどに、まさに本人としてはピーターソンになりきって演奏している数々のソロ・プレイ、しかし、なぜかそこにはオリジナルのもつクールさが、見事に欠如していました。

SACD Artwork © BIS Records AB
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by jurassic_oyaji | 2014-03-05 20:28 | ピアノ | Comments(0)