おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
MOZART/Serenade K361 "Gran Partita"
c0039487_2140381.jpg




Stuttgart Winds
TACET/B 209(BA)




ドイツのTACETというレーベルは、1980年代の終わりごろに、それまでINTERCORDレーベルでレコーディング・エンジニアを務めていたアンドレアス・シュプレアーという人が作ったものです。彼のこだわりは、真空管マイク。ノイマンのU-47とか、M-49といった、それぞれの品番に現れている1947年と1949年に発表されたというヴィンテージ・マイクをメインに使って、暖かみのある音を目指しているようでした。それは到底CDでは十分に味わえるものではないという気がしていたので、以前LPを入手して聴いてみたことがありました。しかし、その盤質は最悪で、素晴らしい音の片鱗すらも味わえないものでした。
最近になって、このレーベルではついにBAを出すことになったようです。その最初のリリース分の中にこんな「名曲」があったので、このフォーマットだったらシュプレアーが求めていた音が存分に伝わってくることを期待して、聴いてみることにしました。
いやあ、その音ときたら、まさに度肝を抜かれるようなものでした。スペックは24bit/96kHz、全くストレスを感じることのない、現在求め得る最良のデジタル録音を味わう思いです。それぞれの楽器はとてもなめらかな肌触りでしっかりと存在感を見せていますし、アンサンブルとしての音の融け具合も見事です。この曲の場合、当時の一般的なハルモニー・ムジークの編成(オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンがそれぞれ2本ずつ)に、バセット・ホルンとコントラバスが加わっていますが(さらにホルンが4本に)、そんな特徴もはっきり楽しむことが出来ます。特に、クラリネットとバセット・ホルンは、同じ仲間でありながら、微妙にキャラクターが違っていることが、これほどはっきり聴き取れる録音には初めて出会えたような気がします。
ですから、そこからはモーツァルトのオーケストレーションの見事さもしっかり伝わってきます。例えば3曲目の「Adagio」では、オーボエ、クラリネット、バセット・ホルンという3つのメロディ楽器は、それぞれの2番奏者がオスティナートを吹いている中を、1番奏者が代わりばんこに美しい歌を歌いつなげていきます。長いメロディ・ラインを、それぞれ最適だと思われる楽器が受け持つ、その受け渡しは、見事としか言いようがありません。一渡り歌い終わったところで、今までリズムばかりを吹かされていた2番奏者にかわいらしいフレーズがまわってくるのも、演奏家にとってはたまらない配慮です。
と、そのあと新しい歌が始まったとたん、何か違和感のある音が聴こえてきました。オーボエとバセット・ホルンのターンの下の音が、聴きなれたものより半音高いのですね。しかも、前の音とタイでつながっています。
そういえば、それまで聴いていた中でも、アーティキュレーションがちょっと違うものがあったような。
楽譜を調べてみたら、ここで使われているのはベーレンライターの新全集だとわかりました。ブライトコプフの旧全集とは、かなりの部分で違っているのですね。しかし、この部分は自筆稿にははっきりナチュラルが書いてあるのに、なぜ旧全集ではそれが落ちてしまったのでしょう。世の愛好家は、ずっと間違った音で聴かされていたのですね。

↑旧全集


↑新全集


↑自筆稿


最近の録音のものでもいまだにこの間違った旧全集を使っているところもありますが、ピリオド楽器系ではもちろん新全集を使っています。ここで演奏しているのは、あのノリントンにピリオド奏法を仕込まれたシュトゥットガルト放送交響楽団の管楽器のメンバー、そもそも1曲目の序奏でも付点音符を長めに演奏していましたし、ホルンもナチュラルっぽい音を出したりしてピリオド・アプローチを心がけているようですから、新全集を使うのは当たり前なのでした。最後の「トルコ行進曲」では、コントラバスが「バルトルコ(バルトーク)・ピチカート」を使って、にぎやかさを演出していましたしね。録音も演奏も大満足、シュプレアーの思いは、見事に伝わってきましたよ。

BA Artwork © TACET
[PR]
by jurassic_oyaji | 2014-03-07 21:43 | オーケストラ | Comments(0)