おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ | ログイン
RAVEL/Orchestral Works
RAVEL/Orchestral Works_c0039487_20521149.jpg



Alexander Kalajdzic/
Bielefelder Philharmoniker
MDG /901 1820-6(hybrid SACD)




ラヴェルのオーケストラ作品の新しいアルバムです。とは言っても、全て最初はピアノ曲だったものをオーケストラ用に編曲したものです。ここに収録されている「高雅で感傷的なワルツ」、「古風なメヌエット」、「亡き王女のためのパヴァーヌ」はラヴェル自身が編曲を行い、すでに日常的に演奏されているバージョンですが、「夜のガスパール」だけは、マリウス・コンスタンという人によってごく最近編曲されたもので、たまにしか演奏されません(コンスタントではない、と)。
この編曲は、1990年にコンスタンがラヴェルの遺族と出版社からの要請で行ったもので、その年にまずローラン・プティジラール指揮のフランス交響楽団によって初録音されます。さらに翌年、1991年にこのメンバーによる公開の初演がサル・プレイエルで行われ、同じ年に楽譜も出版されました。その後は、このバージョンは、2004年のエッシェンバッハ盤(ONDINE)、2007年のジョナサン・ダーリントン盤(ACOUSENCE)と2012年のスラトキン盤(NAXOS)いう3種類の録音が出ただけなのではないでしょうか。ですから、今回の録音は知りうる限り5度目のものとなるのでしょう。
演奏しているのは、初めて耳にしたビーレフェルト・フィルハーモニカーというオーケストラです。北ドイツのビーレフェルトという街に、1901年に創設されています。ただ、ここの公式サイトなどを見てみると、管楽器は3管から4管のメンバーを抱えているようですが、弦楽器がかなり少なめ、コントラバスなどは4人しかいません。まあ、普通の有名なオーケストラのほぼ半数のメンバーですね。日本で言えば仙台フィルのような地方オケよりも少なめです。ブックレットにある、おそらく演奏会の前に撮ったと思われる集合写真では、やはりサイトで見られる人数ぐらいしかいませんから、こんなほとんど「室内オケ」に毛が生えたような編成で頑張っているのでしょうか。
その写真の場所は、このオーケストラの本拠地であるルドルフ・エトカー・ハレという、収容人員1500人ほどのホールです。床が真っ平な、本当の意味でのシューボックス・タイプの形をしていて、ステージにはオルガンも設置されています。
このオーケストラは、ビーレフェルト劇場で行われるオペラ公演でも演奏しています。その、オペラ、オーケストラを統括する総音楽監督を2010年から務めているのが、ここで指揮をしているザグレブ生まれのアレクサンダー・カラジッチです。
そんな彼らが演奏するラヴェルは、どことなく機能的な感じが与えられるものでした。管楽器の奏者たちは、かなりの高レベルのような印象があります。特にフルートやクラリネットのソロには、しばしば「すごい」と思えるようなところがあって、とても聴きごたえがあります。ただ、そのような個人芸には秀でたところがあるものの、全体の演奏になるとなにか心に迫るものが希薄になってしまいます。特に、最初の「ワルツ」などは、ラヴェルには必ずあってほしい「粋」なテイストがほとんど感じられないのが、さびしいところです。これは、弦楽器の人数が少ないことも、たぶん影響しているのではないでしょうか。音が生で聴こえてきて、包む込まれるような感触が得られないんですよね。
しかし、最後の「夜のガスパール」は、ちょっと様相が違っています。コンスタンの編曲は、はっきり言ってラヴェルの趣味とはかなり隔たりのあるものです。初演盤では、そこにちょっとした勘違いがあったようで、何か全体の音を融合させようという意識が感じられ、確かにそこからはある意味「ラヴェル風」の響きは聴こえてきたものですが、今回はSACDということもあってそれぞれの音、特に打楽器が生々しく聴こえてきて、「コンスタンらしさ」がはっきり感じられるものになっているのです。ラヴェルには向かないオーケストラだと思っていたものが、こんなところで威力を発揮していたとは。

SACD Artwork © Musikproduktion Dabringhaus und Grimm
by jurassic_oyaji | 2014-03-15 20:53 | オーケストラ | Comments(0)