おやぢの部屋2
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ゴーストライター
 ここによく登場するうちの社長は、音楽が大好き、ニューフィルの定期演奏会にも毎回来てくれます。と言っても、私みたいな変なマニアではなく、普通に楽しんで聴いているというまっとうな愛好家なんですけどね。その社長が、今日「有名な作曲家で、ゴーストライターをやっていた人がいるって知ってたか?」と聞いてきました。なんでも、テレビでそんなクイズをやっていたのだそうです。私はその番組は見てませんが、それは間違いなく先頃の「ゴーストライター騒動」を受けての企画なんでしょうね。三択で「モーツァルト、ベートーヴェン、それと・・・」というぐらいですから、正解はその二人のどちらかですよね。まあ、もしかしたらベートーヴェンだってやってたかもしれませんが、なんたって分かりやすいのはモーツァルトの方ですから、すかさず「モーツァルトだべ?」と答えてやりました。社長は意外そうに、「う・・・、うん、モーツァルト・・・」と、悔しそうです。もっと考え込むと思っていたのかもしれませんね。というか、まさかあのモーツァルトがゴーストライターをやっていたなんて、と、社長にしてみればものすごい驚きだったのでしょうね。それをあっさり受け流されたもんで、一瞬たじろいだ、と。
 私にとっては、そういうテレビのバラエティのレベルでも、そういうことが話題になっているという方が意外でした。あの「ゴーストライター」のおかげで、そんなことまでがネタになっているとは。
 だいたい、クラシックの世界で、昔学校で習ったこととか、昔から言い伝えられていることが、最近になってちゃんと調べると実は間違っていた、というものが結構あるのですが、それはマニアの間では「常識」になってはいても、特に興味のない人にとってはどうでもいいことで、間違いはそのまま通用する、というのが普通の姿でした。ベートーヴェンが交響曲第5番のテーマについて「運命は、このように扉を叩く」と言った、とか、シューベルトの「魔王」は作品番号が「1」だから、最初の作品だ、とか、「展覧会の絵」を最初にオーケストラに編曲したのはラヴェルだ、と言ったような俗説を真実だと信じて疑わない人がほとんどなのですよね。
 ですから、「神童」とあがめられているモーツァルトが、「ゴーストライター」のような卑しい仕事に手を染めたなどと言われても、誰も信じるわけはありません。というか、そういう状況があるからこそ、こんな「クイズ」が成立することになるのでしょうがね。もちろん、私たちはモーツァルトがれっきとした「ゴーストライター」であったことを知っています。それを行ったのは、彼の最後の作品となった名曲中の名曲である「レクイエム」であることも。ただ、この曲が出来たいきさつに関しては、割と最近までは本当のことは知られておらず、「見知らぬ黒い服の人が作曲を頼んだ」というような伝説がおおっぴらに語られていましたし、それが事実ではなかったことが判明した後でも、あの「アマデウス」という映画で、そんな嘘の上塗りをするようなデタラメをでっちあげていたのですから、真実はなかなか「バラエティのレベル」までは広がりにくい、というトリックもありました。なにしろ、あの映画での、サリエリがモーツァルトの口述筆記をするシーンはとてもよく出来ていましたから、実際にああいうことがあったのだと信じてしまう人だっていたはずですからね。

 ですから、そういう状況を分かっていて、このタイミングで「モーツァルトはゴーストライターをやっていた」というトリビアに基づくクイズを作った人は、なかなかのセンスの持ち主だと思えてしまいます。
 実は、「このタイミング」に便乗して、ちゃっかり演奏会のプログラム用にそれを盛り込んだ原稿を書いた人がいました。ちょっとふざけ過ぎかな、と、一旦はそれを引っ込めて穏健なものに直したのに、やはりそれがあった方がいいという声に押されて、結局元の形でプログラムに載せることになったそうです。バラエティ以外にも、あの事件は色んなところで役に立っています。
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by jurassic_oyaji | 2014-03-24 21:54 | 禁断 | Comments(0)