おやぢの部屋2
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HUMMEL/Mozart's Symphonies Nos. 38, 39, 40
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Uwe Grodd(Fl), Friedemann Eichhorn(Vn)
Martin Rummel(Vc), Roland Krüger(Pf)
NAXOS/8.572841




フンメルという、まるで下剤のような名前の作曲家(それは「糞出る」)によってフルート、ヴァイオリン、チェロ、ピアノという編成のアンサンブルに生まれ変わったモーツァルトの交響曲です。彼は8歳の時にモーツァルトの家に住み込んでピアノのレッスンを2年間受けていて、生涯その師に対する尊敬の念を持ち続けますが、これもそんな気持ちの表れだったのでしょう。
このような編成ですから、おそらくコンサートでお客さんを前にして演奏するというよりは、実際に自分たちで演奏して楽しむ、といった需要に答えて作られたものなのでしょう。基本的に、プロではないけれど、かなり達者にピアノが演奏できる人が中心になってモーツァルトの交響曲の骨格を演奏、それにオブリガートという形で他の3つの楽器が絡む、と言った感じなのではないでしょうか。
ですから、これらの編曲を聴いていると、アンサンブルのそれぞれのパートにしっかりとした必然性があるとは、なかなか思えてきません。例えば、39番の第3楽章のトリオでは、オリジナルは弦楽器の薄い刻みに乗って2本のクラリネットと1本のフルートが、文字通り「トリオ」として、2番クラリネットのベースラインの上で1番クラリネットとフルートが掛け合い演じるという絶妙のアンサンブルが展開されているのですが、この編曲では、なんとフルートのフレーズとピアノとが重ねられているのです。これは、原曲を知っている人にはとてつもなくダサいアレンジに聴こえるはずです。
したがって、こういう楽譜を演奏するのであれば、ピアノ以外の楽器は極力「邪魔にならない」ようにふるまうのがセオリーとなるはずです。ところが、このCDではピアノのクリューガーがとても素晴らしい演奏を聴かせてくれているのに、フルートのグロットが、まるで自分が主人公のようにふるまっているものですから、事態は深刻です。このフルーティストは、特にピッチがなんとも不安定なためにいやでも目立ってしまって、アンサンブルをぶち壊しているのですからね。
ところで、このCDを聴いていると、40番の第2楽章の中で2ヶ所、ちょっと「変だな」と思えるところがあることに、誰でも気付くはずです。それは正確には、提示部の29小節から32小節と、再現部の100小節から103小節のそれぞれ第2主題の中ほどの4小節間。原曲では木管が切れ切れに三十二分音符の下降スケールを4小節に渡って交代に吹くという部分です。そこで全く同じ形のものが多少アレンジを変えて丸々2回繰り返されています。つまり、オリジナルの4小節が8小節に拡大されているのですよ。実は、モーツァルトの自筆稿ではここで確かに新たにその4小節分の楽譜が加えられているのですが、それは現在では「代替用」として加えられたものだと考えられています。しかし、当時の写譜屋がそれを「追加用」と勘違いして誤ってそこに挿入してしまったために、最初の出版譜では「8小節」として印刷されてしまいました。もちろん、後の楽譜ではその箇所は「4小節」に訂正されているのですが、フンメルがこの編曲を行った時にはまだその「誤った」楽譜しか世に出ていなかったのですね。
しかし、今回新しく楽譜を校訂したグロットは、その部分はそのまま「8小節」にしています。なんでも、1997年に「その部分は『追加用』とみなされるべきである」という説が発表されたのだそうなのですよ。しかし、実際にここで音になっているその部分を聴いてみると、「8小節」にするためにその「4小節」を4小節目の最後から1小節目の最初につなごうとすると、その間の和声が絶対にモーツァルトではあり得ない進行になってしまうのですね。それは、新モーツァルト全集の校訂者のロビンス・ランドンも言っていること、まともな審美眼の持ち主であれば、ちょっと、この「新説」には同意しかねるのではないでしょうか。
この部分は、こちらで聴くことが出来ます。第2楽章の01:31からと05:32からです。なお、2006年に録音されたヘンリク・ヴィーゼなどによるCD(BIS-1567)では、ここは「4小節」で演奏されています。

CD Artwork © Naxos Rights US. Inc.
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by jurassic_oyaji | 2014-04-06 20:39 | オーケストラ | Comments(0)