おやぢの部屋2
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DYRUD/Out of Darkness
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Geir Morten Øien, Erlend Aagaard Nilsen(Tp)
Lars Sitter(Perc), Sarah Head(Readings)
Vivianne Sydnes/
Nidaros Cathedral Choir
2L/2L-099-SABD(hybrid SACD, BA)




ノルウェーの2Lレーベルは、今にして思えばまさに「ハイレゾ時代」を予見していたような、この方面ではパイオニア的な存在です。リリース形態も、SACDBAの2枚組というところに落ち着いたみたいですね。ただ、このBAが、プレーヤーの機種によっては認識されないことがあるのがちょっと問題、さらに、このジャケットもイエスが「ピース!」と言いながら復活してくるなんて。太ももまで出して(それは「ハイレグ」)。
もちろん、こんなジャケットは要らないという人には、ハイレゾのデータも用意されています。こちらで購入できますが、さすが2L、しっかり最高スペックの24/192を提供してくれていますね(なんと、SACD以上のハイレゾ、5.6MHzDSDまで)。もちろん、BAのスペックも同じ24/192です。ここで注目したいのは、そのワンランク下の24/96では少しお安くなっているということ。つまり、こちらのように、192でも96でも同価格というものは、元のデータはあくまで96で、192は単なるアップサンプリングだ、ということなのですからね。
合唱関係ではまず失望させられることのないこのレーベルですが、今回もなかなか興味深いところが取り上げられています。ノルウェーの作曲家、トルビョルン・デュールードという人が作った「暗闇の外へ」という、いわば「受難曲」です。ただ、物語は例えばバッハの作品などのように「受難」の周辺だけを扱うのではなく、イエス・キリストが生まれるところから始まり、「受難」の後のティベリア湖畔での復活の場面までが扱われています。タイトルも、暗い棺の中から復活して明るいところへ出るという意味合いが込められたものなのでしょう。ですから、その場面をしっかり表現したのが、このジャケットということになるのですね。
デュールードという人は、1974年にノルウェーに生まれ、ノルウェー音楽アカデミーやスウェーデンのストックホルム王立音楽大学で主にオルガンや合唱指揮、さらに作曲と即興演奏も学んでいます。この作品を聴いていると、多分に即興的な要素が見られますし、きっちり型にはまらない、ある意味ぶっ飛んだテイストが非常に感じられます。それは、このジャケットにも共通するような「ヘタウマ」の世界のような気がします。もちろん、それはとてもしなやかな情感となって、聴く者には伝わってくるはずです。
編成はトランペット2本と打楽器という伴奏で、混声合唱が歌うもの。それ以外に「朗読」という形で、とてもチャーミングな声の女優さんが、きれいな英語で物語を語ってくれます。その時には、合唱が薄くバックを務めていたりします。
合唱が歌う部分も、テキストはほとんど英語、「Crucify him!」などという言葉が飛び交うと、まるでロイド・ウェッバーのミュージカルのような雰囲気が漂います。そんなキャッチーな部分があるかと思うと、それこそ「前衛」っぽい技法が現れたりと、常に予想を裏切ってくれる「ヘタウマ」の応酬による受難曲、退屈とは無縁の音楽が続きます。全曲演奏してたったの55分ですからね。
最後近くに「Das Blümelein so kleine」というドイツ語のタイトルの曲が現れます。それは、マリンバで演奏されるまるでバッハのようなフレーズに乗って歌われるとても美しいコラールでした。おそらく、作曲家は意識してバッハへのオマージュを試みているのでしょうね。
歌っているニーダロス大聖堂の合唱団も、やはりうまいのかヘタなのかわからない独特の魅力を持っています。その、幾分表面がザラザラしていても、口に入れればあふれるばかりの果汁に満たされるオレンジのような豊潤さは、BAによって完璧に味わうことが出来ます。それが、SACDでは、自然のザラザラさが人工的にツルツルになってしまったように聴こえてしまいます。
そんなオーディオ的な魅力、たとえば、イエスが十字架にかけられる時には、打楽器奏者が実際にハンマーで釘を打ちつけている音が聴こえますが、そのリアルさがきっちり味わえるのはやはりBAです。

SACD and BD Artwork © Lindberg Lyd AS
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by jurassic_oyaji | 2014-04-18 21:14 | 合唱 | Comments(2)
Commented by JK at 2014-04-19 09:28 x
初めまして、JKと申します。
こちらのブログには大変勉強になるお話し、有用なディスク選定ガイドとして、毎回非常に楽しみに拝読させていただいております。
さて今回、本記事のSACDとBAの音質に関する件で(過去何回かこのご指摘はありましたね)、一つ参考意見を述べさせてください。
私、これまでの経験から、SACDのストリーミング再生とDSDファイル(DFF,DSF)の再生とでは差があること、後者に相当の優位があると感じております。
かなりの数のSACDプレーヤー、トラポ+DACを聞いてきましたが、再生音には最初期からそれほどの変化(進歩)は感じられず、SACDには見切りをつけた感じだったのですが、数年前SACDからのDSDファイル再生に目から鱗の思いをし、現在に至っています。DSDファイルのネイティブな再生を体感しますと、正直SACDの(現行機種での)ストリーミング再生は、実力の半分も出ていないのではという気さえしています。
ディスクの再生ということでは、「おやぢ」様の言われる通りかと思いますが、SACDにはまだまだ可能性があるということで、参考意見として付言させていただければと存じます。
(既に検証・実践済みのお話であれば、意見の相違ということでご勘弁ください。)
Commented by jurassic_oyaji at 2014-04-19 21:44
JKさま。貴重なコメントありがとうございました。
環境が整い次第、DSDファイルとSACDとの比較なども試みてみたいとは思っています。