おやぢの部屋2
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BARTÓK/Duke Bluebeard's Castle
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John Tomlinson(Bluebeard)
Michelle DeYoung(Judith)
Juliet Stevenson(Narr.)
Esa-Pekka Salonen/
Philharmonia Orchestra & Voices
SIGNUM/SIGCD372




最近では、このSIGNUMレーベルがほとんど自主レーベルのような形でフィルハーモニア管弦楽団の録音をリリースしているようですね。今まで聴いたことはなかったのですが、今回初めて手にしてクレジットを見てみたら、録音担当はLSO Liveなどと同じ「クラシック・サウンド」でした。エンジニアは、おなじみのジョナサン・ストークスです。もちろん、録音はハイレゾで行われているのでしょうが、SACDにはなってはいませんでした。過去に1度だけ、サロネンの指揮による「グレの歌」がSACDで出ていたような気がしますが、それっきりだったのでしょう。今回も、なかなか素晴らしい録音なので、これがSACDだったらさぞやいい音なのだろうな~という、まさに「隔靴掻痒」状態でしたね(そうよ)。
この録音は、2011年にウィーンのコンツェルトハウスで行われたコンサートのライブなのだそうです。ソリストのほかに合唱団のクレジットも入っています。確かに、この作品の途中には「ハ~」というため息が何度か入っていますから、それをしっかりした合唱団が「歌って」いるのでしょうが、このように実際に合唱団の名前までが載っているアルバムは初めて見ました。
ソリストは、青ひげのトムリンソンはともかく、ユディットのデヤングに一抹の不安を抱いてしまいます。この人はいつ聴いてもピッチが許容範囲を超えて高いため、常に違和感を味わった記憶しかないものですから。
最近の上演では慣例になりつつあるように、まず、最初に「前口上」が述べられます。もちろんペーター・バルトークの英訳が使われていますが、それが女性によって語られていたのが、ちょっと珍しいもの、実際この形で聴いたのはこれが初めてです。ちょっとこれは意表を突かれた感じで、この曲を聴くためにちょっと身構えていたものが、見事に肩透かしを食らったような気がします。
そのあとにトムリンソンが重苦しい声で歌い始めるものですから、その対比はかなりなものです。しかし、次にデヤングの声が聴こえてくると、それは確かにさっきの女性の声とのシンパシーが感じられるものでした。彼女の歌い方はやはりいつものように高いピッチの、ドラマティックで高圧的なものですから、そこからはあまり暗さが感じられないのですね。つまり、このあたりのユディットは、完全に青ひげを制圧しているような立場にあるように聴こえてくるのです。
サロネンのオーケストラのドライブは、素晴らしいものでした。ことさら大げさな身振りではなく、しっかり楽譜通りのことをていねいに重ねていく、というのが彼のバルトークへのアプローチのように感じられますが、プレーヤーはそれにしっかり従っているのですね。録音の良さも相まって、その場面に必要な音、たとえば宝石の音色を際立たせるチェレスタなどが過不足なく聴こえてきます。最大の盛り上がりを見せるはずの「第5の扉」のシーンでも、三和音の派手な響きを聴かせるのではなく、それが横につながった時のメロディをくっきりと浮かびあげているやり方をとっています。そうすることによって、ここからはハリウッド映画のようなスペクタクルな光景ではなく、そのテーマの由来するところのハンガリーあたりの風景が浮かびあがってはこないでしょうか。
このあたりを分岐点にして、青ひげとユディットの力関係が変わってくるさまが、デヤングの歌い方の変化によってもたらされている、と感じられるのは、単なる偶然なのでしょうか。いや、心なしか音程も落ち着き、ひたすら自分を責め始めるテキストが現実味を帯びてくるのは、間違いなく彼女の意志によるものなのではないでしょうか。彼女は、本当は相当にクレバーな歌手だったのかもしれません。
なんでも、サロネンはこの時期にバルトークを集中的にコンサートで取り上げていたのだそうです。それが順次CDになって行くのだとか。ちょっと楽しみですね。

CD Artwork © Signum Records Ltd
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by jurassic_oyaji | 2014-04-20 20:25 | オペラ | Comments(0)