おやぢの部屋2
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The Ultimate Classic Best
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Tower Records Selection
Various Artists
TOWER RECORDS/TNCL-1009-18




今年もまた、「ラ・フォル・ジュルネ」の季節がやってきました。毎年様々なテーマを設けて、いろいろな側面からクラシック音楽を多くの人に聴いてもらおう、という東京のイベントですが、今回晴れて10回目を迎えるということで、今までにこのイベントを飾った10人の有名作曲家を一堂に集めよう、ということになっているのだそうです。ヴィヴァルディから始まってガーシュウィンまで、それは確かに「クラシック」の王道たる文句のつけようのないラインナップです。
そこで、それに便乗しようとタワーレコードがナクソスの音源を集めてこんなコンピレーション・ボックスを作りました。10人の作曲家にそれぞれ1枚ずつCDを割り振って、全部で10枚、その名も「永遠のクラシック・ベスト」ですって。ただ、なぜかCDでの作曲家が「フォル・ジュルネ」の面子とは微妙に異なっているのが気になります。1枚目はヴィヴァルディになるはずのものが、バッハになってたりしますからね。10枚目だって、ガーシュウィンとの抱き合わせでラフマニノフが入っていますし。ただ、こちらは「特別収録」という言い訳が付いているので許せますが、1枚目がなぜバッハなのかという説明は一切ありません。そんなんでいいわけ
実は、タワーがこういうボックスを作ったのは、これが初めてではなく、初期のフォル・ジュルネでは毎回マメに作っていたのですが、2008年のシューベルトを最後に、ぱったりその消息が途絶えてしまっていたのです。もうそんなことから足を洗ってしまったのかな、と思っていたら、それから6年経ってまた世間に登場してきました。
再会したボックスは、なんか様子がずいぶん変わっていました。6年前までは山尾敦史さんが選曲から解説の執筆まで担当していたものが、ここでは選曲は「タワーレコードの専門スタッフ」というだけで、個人の名前は明らかにされてはいません。そして、解説の執筆者が、最近ナクソスの国内盤のライナーノーツなどでよく目にする篠田綾瀬さんに変わっています。このあたりの制作上の変化が、しばらくリリースされなかった原因なのかもしれませんね。とは言え、密かにファンを気取っている篠田さんの解説文が読めるのはうれしいことです。
確かに、その解説は、通り一遍のものとはかなり肌触りが違うものでした。まず、あちこちに登場するのが、昔からこういうものによく使われていた逸話のようなものを、しっかり真実かどうか見極めている潔さです。「ベートーヴェンの交響曲第5番の冒頭のテーマは、運命が扉を叩いているものだ」、とか、「シューベルトの『魔王』は、『作品1』なので彼の最初の作品だ」といった、もしかしたらこういうアイテムの購入層にとってはすでにどこかで刷り込まれてしまった「俗説」に対して、「それは間違いなのよ」ときっぱり否定してくれているあたりが、さすがです。
このような俗説排除の姿勢は、ネット記事の弾劾にもつながります。ラヴェルの「ボレロ」の解説では、最後の部分に使われているオーケストラ内の楽器を全て挙げていますが、これをネット辞書「Wikipedia」と比べてみるとやはり微妙に違っていることが分かります。手軽にコピペ出来て何かと重宝する「Wiki」には、実はこんなに間違いがあるんですよ、と、暗に警告しているに違いありません。
選曲はもちろんごくオーソドックスなものですが、演奏者にはかつてのナクソスのような貧乏臭さは全くありません。この中で唯一全曲が収録されている交響曲であるドヴォルジャークの「新世界」(シューベルトの「未完成」は2楽章までですから、「全曲」ではありません)は、まさに新生ナクソスを象徴するようなこちらのオールソップ盤が使われているぐらいですからね。
なによりも、1枚目1曲目の「トッカータとフーガ」の最初の音のモルデントで、あなたは衝撃を受けるはずです。

CD Artwork c Naxos Japan Inc.
by jurassic_oyaji | 2014-04-27 00:34 | Comments(0)