おやぢの部屋2
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BACH/St Matthew Passion
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Werner Güra(Ev), Stephen Morscheck(Jes)
Lucy Crowe(Sop), Christine Rice(MS)
Nicholas Phan(Ten), Matthew Brook(Bar)
Bertrand Grnenwald(Bas)
John Nelson/
Schola Cantorum of Oxford, Maîtrise de Paris
Orchestre de Chambre de Paris
EUROARTS/3079654(BD)




またまた「マタイ」の映像で、済みません。こちらはちょっと前、2011年にパリにあるサン・ドニ修道院の大聖堂で行われたライブです。
この映像で指揮をしているのは、ジョン・ネルソン。METを始め、各地のオペラハウスでのキャリアもあり、現在はパリ室内管弦楽団の桂冠音楽監督というポストにあります。そのオーケストラがここでも登場、ということは先日のダイクストラとは違って、特に「ピリオド」にはこだわらない姿勢をとっているのでしょう。
それに関しては、ボーナストラックの中でのインタビューやリハーサルの様子によって、彼の求めているものの一端が分かるはずです。その中で、特にリハーサルのシーンは「こんなところまで見せるの?」と思えるほどの、興味深いものでした(合唱団のリハーサルの前に合唱指揮者のジェームズ・バートンが「発声練習」をやらせている場面などは、合唱関係者は必見です)。そこでネルソンが歌手や演奏家に指示していること、さらに彼自身のインタビューの中で述べていることは、「音楽に必要なのは『オーセンティックなスタイル』ではなく、『演奏家の気持ち』だ」といったようなものではないでしょうか。あくまで聴衆に向けて熱い思いを伝えることが大事、ということなのでしょう。
本番の映像で、彼の指揮ぶりを見ていると、他人に「指示」するのではなく、その場のプレイヤーがやりたいことを「すくいあげる」というような感じが伝わってきます。それはまるで「もう、リハーサルで私の思いは伝えたのだから、あとはあなたたちで音楽を作りなさい」と言っているように思われます。
確かに、その演奏は「演奏家の気持ち」がしっかり伝わってくるものでした。その、最も成功しているパートが合唱なのではないでしょうか。オクスフォード大学内に作られたこの「スコラ・カントルム」という合唱団は、30人ほどの学生が集まって結成されていますが、彼らは特に音楽を勉強しているわけではなく、専門は別のこと、言ってみれば「アマチュア」ですが、そんな素朴さがとても真摯な演奏になって現れています。最初のうちは男声があまりにも弱体なのでどうなることかと思っていたものが、次第に調子を上げていき、終わりごろには男声もすっかり立ち直って堂々たる歌を聴かせてくれています。彼らは、この指揮者には絶大の信頼を寄せているのでしょう。有名な54番のコラール「O Haupt, voll Blut und Wunden」では、1番が終わった時に指揮者が「次はピアノで」みたいな指示を出すと、2番ではまさにその要求通りの音色で歌い始めたのですからね。そして、終曲のちょっと前、63bの「Wahrlich, dieser ist Gottes Sohn gewesen(まことに、この人は神の子であった)」という合唱には、まさに万感の思いが込められています。
「オーセンティック」にはこだわらないというネルソンのスタンスは、通奏低音の楽器編成などにも表れていることが、映像からは分かります。最近のピリオド系の団体では、そこに馬鹿でかいリュート(テオルボ?)など、様々な低音楽器が加わっていますが、ここではシンプルにオルガンとチェロ、場合によってはコントラバスが加わるだけです。さらに、13番のソプラノのアリア(オーボエ・ダモーレ2本と低音)や60番のアルトのアリア(オーボエ・ダ・カッチャ2本と低音)のオブリガートでは、ファゴット1本だけでバス・パートを演奏しています。その結果、このダブルリード3本だけのアンサンブルは、とてもピュアなサウンドを生み出すことになりました。「オーセンティック」にこだわっていたら、こんなことはできるわけがありませんね。
映像作品ならではの魅力が、かなりユニークなカメラワークに込められています。それは、演奏に参加していない人たちの表情のアップ。最後の合唱では、イエスの人が目に涙を浮かべているのが分かります。

BD Artwork © EuroArts Music International
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by jurassic_oyaji | 2014-05-18 19:50 | 合唱 | Comments(0)