おやぢの部屋2
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BACH/Kantate BWV 147, Magnificat
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Andrea Lauren Brown, Lynda Teuscher(Sop)
Olivia Vermeulen(Alt)
Julian Prégardien(Ten), Sebastian Nock(Bar)
Hansjörg Albrecht/
Münchner Bach-Chor & Orchester
OEHMS/OC 1801




多くの「名盤」を生み、今ではほとんど「記号」と化しているカール・リヒターとミュンヘン・バッハ合唱団&管弦楽団は、カール・リヒターの他界とともに消滅してしまったと思っている人もいるかもしれませんが、今でもしっかり残っています。そして、今年が、リヒターがこの団体を作った1954年から、ちょうど60年目に当たるのですね。そこで、その記念としてリリースされたのがこのCDです。もっとも、演奏が録音されたのは2012年ですから、それ自体はあまり意味がないようですが。
ですから、このCDに「記念」の意味を見出すとすれば、現在のこの合唱団とオーケストラ、そして指揮者のチームによる初めてのバッハ作品(以前の「フェーブスとパンの争い」では、オーケストラの名義が違ってました)だという点と、ブックレットに、この合唱団に1963年から参加しているというクラウス・シュタットラーという人のエッセイが掲載されている点ということになるのでしょう。そのエッセイには、この合唱団の、まさに身内でしか語れないような貴重な「記録」が満載です。ただ、原文のドイツ語を英語に訳したものではリヒターたちが録音を行ったところを「archive productions」という、まるで普通名詞のように扱っているのが笑えます。この訳者は、原文にある「Archiv-Produktion」という、かつては「古楽」界のステータスとも言われた由緒あるレーベル「アルヒーフ」を知らなかったのでしょうか(レーベルの名前だけはまだ有るひーふ)。だとしたら、こんな貴重なエッセイを訳す資格はありません。それだけではなく、このブックレットでは、それぞれの曲をどのパートのソリストが歌っているかという表記が全くありません。これも、「記念」のつもりで作ったブックレットにしては、あまりにお粗末です。
ここでは、おそらく、バッハのカンタータの中では最も有名な147番が最初に演奏されます。まあ、これは、最近のピリオド系の演奏を聴き慣れた耳には、ある意味新鮮なものですが、なにかユルい印象は免れません。5番のソプラノのアリアなどは、高音は苦しそうだしリズム感は悪いしと、いいところがありません。ただ、さっきのような表記なので、これは誰が歌っているのかは分かりません。
「マニフィカート」では手元に楽譜があったので、その人はこちらでも3番のアリアで薄っぺらなところを披露している第1ソプラノの人であることが分かります。これはその前のアリアを歌っている第2ソプラノとはまるで別物ですからね。ただ、本当にひどいのは合唱でした。7番の「Fecit potentiam」などはメリスマの音程がバラバラで、殆どクラスターのように聴こえるほどです。まあ、リヒターの時代から合唱に関しては素人っぽさが目立ったものですが、その伝統は脈々と受け継がれていたのでしょう。
ですから、このCDで聴くべきは、オーケストラ・パートなのではないか、という気がします。このオーケストラはメンバーが固定されている団体ではないようですので、ものすごい人たちが集まってくる可能性はあります。フルートはバイエルン放送交響楽団の首席奏者、ヘンリク・ヴィーゼですからね。彼は音楽学者としても知られていますから、もしかしたらアルブレヒトに何らかのサジェスチョンを与えていたのかもしれないと思えるのが、9番の2本のフルートによるオブリガートが付いたアルトのアリアです。楽譜はこういうものですが、

それを、このように「不均衡」なリズムで演奏しています。こんな演奏は初めて聴きました。

ただし、同じ旋律を歌うソリストが、普通に楽譜通りに歌っているので、フルートは変に浮いて聴こえてしまいます。
もう1ヶ所、最初の曲ではティンパニが小節の頭にある音符の前に、盛大に前打音(時にはロール)を入れて、派手に盛り上げています。これも初めて聴くやり方ですが、こちらは大成功、これだけでも「60周年」のお祝いの気持ちが存分に感じられるのではないでしょうか。

CD Artwork © OehmsClassics Musikproduktion GmbH
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by jurassic_oyaji | 2014-06-01 20:46 | 合唱 | Comments(0)