おやぢの部屋2
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POULENC/Stabat Mater, Sept Répons des Ténèbres
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Carolyn Sampson(Sop)
Daniel Reuss/
Capella Amsterdam
Estonian Philharmonic Chamber Choir
Estonian National Symphony Orchestra
HARMONIA MUNDI/HMC 902149




ダニエル・ロイスと、カペラ・アムステルダム+エストニア・フィルハーモニック室内合唱団という、現在間違いなく最高位にランクされるはずの「ドリーム・チーム」が、プーランクを録音してくれました。一応メインの扱いになっているのが「スターバト・マーテル」ですが、その前に「テネブレの7つの応唱」が演奏されています。いずれも、キリストの死をテーマにしたテキストによる、ソロ、合唱、そしてオーケストラという大きな編成の作品です。
「テネブレの7つの応唱」は、餃子屋さんからではなく(それは「王将」)、レナード・バーンスタインからの委嘱を受けて作曲されました。それは、彼が音楽監督を務めるニューヨーク・フィルの本拠地となる、リンカーン・センターのコンサートホールのオープニング記念演奏会のための委嘱だったのです。実際に初演が行われたのは1963年4月のこと(指揮をしたのはバーンスタインではなく、トーマス・シッパーズ)、プーランクはその少し前にこの世を去っていました。つまり、これはプーランクが作った最後の合唱曲ということになります。
その半年後、ジョルジュ・プレートルの指揮によってパリでヨーロッパ初演が行われるのですが、同じ指揮者によってEMIに初めて録音されたのは、それから20年を経た1983年のことでした。しかし、どうやらこの作品は録音に恵まれない星の元に生まれたようで、そのあとはこちらのハリー・クリストファーズとザ・シックスティーンの1994年の録音まで待たなければいけませんでした。そして、おそらくそれに次いでの録音が、さらに20年近く経った2012年のこのCDということになるのではないでしょうか。
オリジナルの編成は、トレブル・パートは少年合唱が歌うように指定されています。さらに、ソロもボーイ・ソプラノが担当することになっています。あくまで、少年ならではの無垢な声を、プーランクは欲していたのでしょう。ですから、プレートル盤ではそのようなメンバーによって演奏されていました。ところが、この録音を聴くと、その少年合唱があまりにひどいのですね。それは、初演に立ち会えなかった作曲家がもしこれを聴いていたら、さぞやがっかりするだろうな、というほどのひどさです。そのせいかどうかはわかりませんが、次のクリストファーズ盤では普通の混声合唱で歌われています。もちろんこの団体ですから、女声パートはあくまでピュアな歌い方に徹していて、作品の求めるものにきっちりと即していたはずです。この時のソリストも合唱団のメンバーのソプラノで、まるで少年のような雰囲気の声を持った人でした。
そして、今回ももちろん合唱は大人の混声合唱です。おそらく、この曲ではコンサートでも普通の混声合唱が歌うことの方が多くなっているのではないでしょうか。そういうスキルを持った団体が増えてくれば、もはやいい加減な少年合唱の出番はなくなってきます。もちろん、「ウィーン楽友協会合唱団」のような雑な合唱団の出番も。
クリストファーズ盤では25人ほどのメンバーだったものが、今回はその倍に増えています。その分、いくらか表現のキレが鈍くなった感はありますが、それを補って余りある質感、それもいぶし銀のような重厚な肌触りと、オーケストラの渋い音色とによって、作品のメッセージはより的確に伝わってきます。まるで無調のような厳しさを持つこの作品の中で、唯一明るめな2曲目「Judas mercator pessimus」で、最後にア・カペラで「Melius illi erat, si natus non fuisset(彼にとっては、むしろ生まれない方が良かったであろうに)」と突き放されるシーンなどは、まさに絶品です。
ただ、ソリストのサンプソンは、ちょっと誤算でした。彼女は、もっとノーマルなプーランクらしさが漂う「スターバト・マーテル」でさえ、この合唱団の中ではちょっと浮いて聴こえてしまいます。

CD Artwork © harmonia mundi s.a.
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by jurassic_oyaji | 2014-06-25 20:41 | 合唱 | Comments(0)